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洞窟

 明け方、顔を洗いに行ったロリクスが奇声を上げながらモミジに掴みかかり、ソシエがそれを抑えながらモミジをしかるという一幕があった物の、三人は無事ダンジョンへの突入を果たす事が出来た。

 そのダンジョンは【戸惑いの洞窟】といい、入り組んだ地形をしている。

 洞窟という特性上、モミジとソシエの大規模な魔法は使用不可能となる場合が多い。

 炎を密閉された洞窟で使うのは当然危険だが、風の魔法は食う気を扱うため酸素量に響く、水や土の魔法は落盤の可能性があるため使えない。

 光や闇は衝撃が大きいため水土同様に落盤の危険性があるし、雷はその全ての要素を持っている。

 故に、この場での戦闘はロリクスに一任するしかない。

 とはいえ、このダンジョンは敵のレベルがさほど高くない。

 せいぜいボスが150前後歩かないかといった程度で、雑魚ならば魔法に特化したモミジとソシエでも殴り倒す程度のことは可能だ。

 しかし殴り倒せるとは言え魔法使いなので、防御面には不安が残るのでいざという時や、敵が多すぎる時以外は後方待機とロリクスに強く言われていた。


「魔術で何とか援護できればな……」


「魔法使いの特性、フレンドリーファイアをやられるのは簡便な」


「あれは特性じゃなくて攻撃範囲が広いだけよ。

魔術なら、狙い打たなきゃ大丈夫」


「……じゃあゲーム時代に後ろから撃たれたのはなんだ」


「誤射」


「うん、誤射が怖いから撃たないでくれ」


 モミジとロリクスが仲良く話している最中、ソシエだけはきょろきょろと周囲を見渡していた。

 入り組んでいる場所だからこそ、少しでも地形を記憶しようとしているのだろうか。

 そう考えてモミジは声をかけなかったが、実際は違った。


「あ、あったあった」


 そう言ってソシエは壁に近づいて、地面から生えたキノコを数本引き抜いた。

 【カエレ茸】、素材アイテムとして錬成すれば薬になるキノコだ。


「なにそれ」


「カエレ茸、薬の材料になるの。

こっちに来てから薬の種類がドドーンと増えちゃって素材不足なんだよね」


「へ、へえ」


「あ、ちなみにちなみに。

これ、媚薬とか惚れ薬の原材料なんだけどいる? 」


「いらない、絶対にいらない、送ったら無の衝撃打ち込む」


「媚薬と惚れ薬……言い値で買おう」


「じゃあ命で」


 笑顔のままロリクスに杖を向けたソシエだったが、やり取りに疲れたのかモミジはため息をついて洞窟の奥へ進むことにした。


「ナイア、道はわからないのね」


「覚えてるわけないじゃないですかー。

こんなところ通らないんですから。

あ、でもニールお得意の趣味全快なトラップは有るので注意してください」


 ニールの趣味トラップと聞いてモミジは顔色を変える。

 そのついでに露骨い嫌そうな顔をして見せて、再びため息をついた。


「ソシエー、ここ教育に悪いトラップがあるらしいからロリクスを先頭に進ませよう」


「賛成! 」


「俺の意見は!? 」


 元より先頭を進んでいるのがロリクスなため、順番を変える必要はない。

 けれどトラップが、それもろくでもないトラップが仕掛けられているとなると躊躇の一つくらいは出てくるものだ。

 更に言ってしまうと、この先にトラップがあります、と理解していればさらに進む気は失せるだろう。


『この先罠大量』


 そう日本語で書かれた看板を見つけたことで、三人のモチベーションは地に落ちた。


「あーニールの字です」


 ひょっこり顔を出したナイアから聞きたくない情報を得て、モミジは頭を抱える。

 ソシエは笑顔のまま冷や汗を流しており、ロリクスに至っては13階段を上る死刑囚のような顔をしている。


「す、進む? 」


「魔法で壊したいけれど……」


 モミジとソシエが躊躇している。

 それを見てロリクスは一つの決心をした。


「モミジ」


「なに」


「俺、お前に言いたいことあるんだ」


「なによ」


「……無事に帰れたら、結婚しよう」


 そう言ってロリクスはトラップが仕掛けられた地帯に飛び込んでいった。

 その結果、地面片突如出現した三角木馬によって拘束され、多数の触手とスライムに弄ばれることとなったが、モミジとソシエは関わりたくないので傍観するにとどめた。


「あ、結婚はお断りなんで」


「よかったね、フラグ折れたよ」


 モミジの拒絶と、ソシエの追い討ちが傷心のロリクスにどう影響を与えたのか。

 それは想像に難くないだろう。

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