情報
「ルーラン……」
思わず、といった様子でロリクスが口を開いた。
あの後がんじがらめに縛りつけたルーランをどうしようかと迷っていたところ、ロリクスとソシエが現れた。
先ほどの火炎旋風を見て、モミジの仕業と気が付いたのだろう。
「お知り合い? 」
「あぁ、ゲーム時代にちょっとな」
「やあロリクス、君のお友達はすごいね。
こうしてつかまってしまったよ。
ニール様のためにも、ここで殺して心を折っておきたかったんだけれどね」
ルーランの言葉に、ロリクスが顔をしかめる。
殺して心を折る、というのは穏やかではない。
だがそれ以上に、二人が敵対していること、また火炎旋風のような複数の魔法を組み合わせて使わなければならないような状況が作られたことを考えて、ロリクスは腰の剣に手を伸ばしていた。
「はいストップ。
殺してなんになるの、どうせどっかで復活するだけでしょう。
だったらせめて情報吐かせてから拘束して適当なところに首だけ出して埋めておくべきでしょう。
ぎりぎり届かないところに食べ物を置いて」
モミジの言葉に若干の冷や汗を見せ他ロリクスだったが、剣からは手を放した。
「それは呪術だろうに……まあいい。
ルーラン、ニールはこの先にいるんだな」
「そうだよ」
「なら……お前と同じようにニールに加担するプレイヤーはどれだけいる」
「さぁねぇ、10人かもしれないし100人かもしれない。
僕も正確な数はわからないよ。
だけど、顔なじみのサービスだ。
15人は超えているだろうね」
ルーランのピエロのような化粧は厄介だ。
顔色の変化が分かりにくい。
いっそあの化粧を剥いでしまおうかとも考えていたモミジは、ソシエによって止められていた。
「そうか……その中にクリスはいるのか」
「……」
ロリクスの言葉に、ルーランは化粧越しでもわかるほど口の端を釣り上げて、声をあげて笑い始めた。
「くかけけけけけけ、クリス!
クリスかぁ! 懐かしいなあのあばずれ女!
ニールに支持しているかって?
あぁしているだろうさ!
だけどあのあばずれはゆがんでいるからなぁ!
僕たちとは違うところにいぐぺ 」
ロリクスは我慢できないといった様子で剣を抜き放ち、話をつづけていたルーランの口元に剣を突き刺した。
それは、モミジとの戦闘でダメージを受けていたルーランにはとどめの一撃となった。
光の粒子となって崩れていくルーランを、モミジはただ見つめる事しかできなかった、わけではない。
「無の衝撃」
霧散していくルーランに追撃を咥えて、すっきりしたといわんばかりのため息をついた。
その様子に唖然としたのはロリクスとソシエだった。
「……鬼畜」
「というかなんで追撃を」
「んー腹が立ったから、じゃだめ? 」
可愛らしく首をかしげているが、お前ら納得しろよという言外の声を聴いた二人は大人しく首を縦に振るしかなかった。
結局のところ、まともな情報はほとんど得る事が出来なかった。
けれど、有益な情報がなかったわけではない。
それだけで良しとしつつ、宿に戻った。
なお、宿には温泉があったが覗きを企てたロリクスは半死半生まで追い込まれることになった。