セカンドステージ
「さっきは苦手分野だったからね~。
今度は君の得意分野だよ、さあがんばってね」
にやにやと笑みを浮かべながら消えたルーランを無視してモミジは杖を握り直し、ポケットに入れていたMP回復薬をざっくりと数える。
飴玉サイズのため、10個前後もっていたことに胸をなでおろしつつも敵の数を考えると少々心もとない。
ついでに下手に防衛軍とかに出てこられると魔法での攻撃が難しくなる。
「……速攻で、最低限の攻撃での殲滅か」
それは人が来るよりも早く、出来るだけ余力を持って戦わなければいけないという厳しい現実だった。
「無の衝撃! 」
無の衝撃は、衝撃波に比べると攻撃範囲は狭い。
しかしながら衝撃波はまっすぐ伸びる為に効果範囲は細長くなる。
そのため、相手が散開している状況であれば衝撃波よりも効果的なのは衝撃の方だ。
「【アシッドレイン】、ドレインウッド、ヘルフレア、【ホワイトランス】」
次々と魔法と魔術を打ち出して敵を撃ちとっていく。
さんの雨を降らせ、寄生する植物を植え付けて、地面もろとも焼きつくし、光の槍で突き刺す。
おそらく300体は殺しただろう。
だが、まだ1割も減っていない。
対してモミジのMPと魔力はそれぞれ3割近く減っていた。
単純な計算では6割ずつ使ってようやく敵の1割を倒せる程度だろうか。
モミジはMP回復薬を舐めながら思考を巡らせた。
(無の衝撃波……だめだ、散開しすぎている。
無の衝撃……これも当たらない。
ただの属性魔法じゃ耐性持ちが撃ち漏れる……なら、あれしかないか)
「ウィンドゲート」
魔力を消費して魔法を放つ、それは風属性の魔法で相手を吹き飛ばす物だ。
しかし、それ単体では攻撃力はない。
「【ウィンドゲート】」
今度は位置と向きを変えて、スキルで同様の魔法を使用する。
複数方向からの風だ。
「プロミネンス! 」
炎系魔法最上位の魔法を発動させる。
これでモミジの仕掛けは済んだ。
「風が渦巻く、そこに上昇気流が加わる。
答えは一つ」
風はうねりを上げて巨大な竜巻へと変貌する。
更に竜巻はプロミネンスによって大きさを肥大化させ、炎には酸素が送り続けられる。
「命名:プロミネンスタイフーン、ってね」
相乗効果は延々と続き、炎と風に耐性のないモンスターを蹂躙していく。
すでに空まで届くのではないかと思われる程の超巨大竜巻になすすべなく飲み込まれていくモンスターを、モミジは回復薬を舐めながら眺めていた。
「セカンドステージクリアよ」
「……おみごと、では第三ステージだね。
クリア条件、動かずに僕に殺されること。
もし動いたらあの街は消滅するよ」
ルーランの言葉に、モミジは驚かなかった。