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魔王ニールという存在

「さて、ではそろそろ真面目な話でもしましょうか」


 ある程度質問を受けたところで、ナイアは先ほどまでの笑顔から真面目な表情へと切り替えた。

 それは先ほどまでの作り物めいた表情ではなく、ナイア自身の素の表情のようにも見えた。


「我々が、えーと何と言いましたかこの国は」


「モガミ国」


「そうそうモガミでしたね。

この国に攻め込んだ理由ですが、魔王ニールの依頼なんですよ」


 ナイアが【魔王ニール】という言葉を発した瞬間、アンドレイとその場にいた兵士たちはびくりと体を震わせた。

 しかし、モミジを含むプレイヤーはその名前を知らなかった。


 だが逆にそのことが気になる。

 この世界はゲームをもとにできている。

 もしくはこの世界をもとにゲームが作られている。


 それは言ってしまえばモミジたちが知らないということは、ゲーム時代には起こりえなかったことが起こるということだ。

 

「……アンドレイ、魔王ニールについて説明を」


 モミジは一瞬考え込んでからアンドレイに説明を求めた。

 その言葉にアンドレイは一瞬驚きの表情を見せたが、すぐに持ち直して説明を始めた。


「まずはじめに、魔王という存在についての説明からです。

奴らは不死の兵士を引き連れていますが、それはアンデットではなく魔族と呼ばれます。

魔族の特徴はその強大な戦力のみ。

そのため人間から魔族が生まれることもよくあります。

というより基準で行けばあなた方は魔族です。

そして、魔王の共通点とでもいうべきは我々と敵対する意思はないが交戦を望むならやむなしという立場を持っているということです」


「つまり……魔王と呼ばれる存在は複数いて更に殺しても死なない兵士たちがいてその個々が強力な力を持っている」


「唯一の救いは好戦的ではない事」


 ロリクスが考え込みながらそう呟く。

 それを補完するかのようにモミジが言葉をつづけた。

 その言葉にアンドレイはうなずい手から説明をつづけた。


「その通りです。

魔王達は基本的に我々に干渉することはありません。

しかし自分たちの仲間が攻撃を受けた際は報復として国を消し飛ばしたという事例も残っています。

その為相互不可侵が基本ですが魔王ニールはその中でも特殊な存在です。

奴は、魔法が使える唯一の魔王であり、魔王の中でも群を抜いて危険とされているにもかかわらず人間と交易をかわす存在でした」


「でした……」


「それは過去の話であり、今は彼の居城に近づくすべての存在に対して攻撃を加えるようになりました。

事の始まりは今から200年前、ニールの愛する女性であるローキスが聖国アトラシアによって生死の境をさまようけがを負わされたことに始まります。

その際ニールは怒り狂いましたが、それを止めたのはローキスの兄であるロスクでした。

それによりアトラシアは崩壊を免れましたが当時の重鎮は全員処刑、合わせて国土の半分が焦土となるという結果になりました。

それ以来、手負いのローキスを守る為ロスクと二人で居城に引きこもっているという話です」


「引きこもって……?

200年も? 」


 アンドレイが説明を終えた瞬間、モミジは疑問を口にした。

 伝説とはいえ200年という近代の話だ。

 それにしては内容が不鮮明だ。


「なにせ誰もその姿を見たことが無いうえに記録が少し残っているばかりですから」


 アンドレイたちがナイアの言葉に驚いた理由の一つに、不動を決め込んでいたはずの魔王が動いたということ。

 ナイアのような存在に依頼ができる立場にいることなどが挙げられた。


「……ナイア、魔王ニールについて知っていることは有る? 」


「魔王ニール、フルネームでニール・ザンキス。

主に火と水の魔法を得意とする魔王です。

その出現は今から800年前。

アンドレイの知らない、いわゆる失われた伝説の中で彼は勇者と呼ばれる存在でした。

勇者は魔族を打ち滅ぼすことができる唯一の存在でしたが、ニールはその中でもずば抜けた戦闘力を持っていました。

しかし、とある宗教国家の罠にはまり魔王討伐後幽閉され、ある日幽閉されていた地下遺跡から脱走、魔王になったとされています」


「……詳しいわね」


「友人ですから」


 ナイアは、この時だけは作り物ではない純粋な笑顔を見せた。

 それは先ほどまでの素の真顔よりも、彼女に似合っていた。

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