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ナイアうざい

「さてさて、申し遅れました皆様。

私はご存じのとおりナイトメアでございます。

此度我がマスターであるモミジ様の御姿をお借りしての参上と相成りましたが、本来の私は不定形の存在です。

モミジ様とは契約という形で協力関係となっております。

以後お見知りおきを」


 ナイトメアは、モミジのかぶっていた布団をローブのように体に巻きつけてから何度目かになる優雅な一礼を見せた。

 その姿は見とれるほど美しく、呆けるほどに可愛らしいがその笑顔は彫像のように作りこまれたものだった。


「はい、契約ってなんですか?

エロいんですか? 」


 空気を読まずに声を上げたのはロリクスだった。

 その質問を受けてナイトメアはクスリと笑い、人差し指を立てて唇にあててウインクを返すのみだった。

 その動作のみで数人の男性は口元を抑えて前かがみになったが、ナイトメアはにやにやと笑うだけだった。


「ナイトメア……というのはめんどくさいですね。

今後はナイアとでも名乗りましょうか」


 男達を籠絡したことを歯牙にもかけず、自分の名前についてを考えたナイトメアもといナイアは唇に当てていた指を顎に当て、少し上を向いてぼそりとつぶやく。

 その動作は至って自然なものだが、やはりどこか作り物のように感じられた。


「どうでもいいけれど、あんたさっきからなんかむかつく」


 その場に居合わせた女性ハンターの一人が声を上げる。

 それは【蛮族の弓服】という少々ほつれた鎧を着ている。

 その鎧は中堅御用達、といえばわかりやすいだろうか。

 強くはないが、手に入れやすく長く使える装備として多くのハンターが愛用している。


「なんかぶりっ子くさいというか……」


 思わず声を上げてしまった女性ハンターは自分の感情に説明がつかないことに違和感を覚えているのだろうか、どもりながら言葉をつづけた。


「それはそうでしょう。

男受けする性格というのは総じて女受けしないものです」


 ナイアは腕を組み、小さく頷きながらそう答えた。

 その動作にはモミジもイラついたのか、【聖者の錫杖】で後頭部を殴りつけようとしたがその攻撃はすり抜けてしまった。

 やはりモミジの攻撃は、契約の影響で届かないようだ。

 その代わりに近くにいたソシエが殴ると、ナイアのはそれなりのダメージを受けたらしく後頭部をさすりながらしぶしぶといった感じで口を閉ざした。


 しかしそれからは周囲の、主に男共からの質問攻めを受けてしまい、女性陣はその度にナイアのあざとさを見せつけられる羽目になった。

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