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「それで、今更な気がするけれどあなたの目的は何? 」


「あなたの『理想の自分』になって差し上げることですよ」


「それはつまり、私の体を乗っ取るということでいいのね」


「人聞きが悪いですね。

あなたの望むように私が動かしてあげるだけですよ」


「それを人は乗っ取るというのよ」


 モミジはナイトメアとの掛け合いを通じて確信した。

 ナイトメアが外の、つまり自分の体を使ってほかのプレイヤーたちを皆殺しにしたというのは嘘だと。

 もしそれが本当であれば、自分と話すまでもなく体を乗っ取ってしまえばいい。

 それをしなかったのは、不可能だからだ。

 最悪のパターンとしてそう思い込ませるというのがないわけでもないが、今回は除外しておこうという結論に至っている。


「残念ながら体を明け渡すつもりはないわ。

ただそうね……あなたが私に協力するなら、代わりの体を探してあげてもいいわよ」


 モミジの言葉を聞いてナイトメアがむくりと首だけ持ち上げる。

 そうして首をかしげたナイトメアにモミジは言葉をつづけた。


「魔法使いの肉体はあきらめなさい。

こっちの世界の魔法使いでも捕まえるのは面倒だし、私たちの同類はもっと面倒だから。

ただそれ以外の……ハンターや剣士やテイマーなんてのは比較的簡単に捕まえられるから。

ただしそれ以降はあなた次第だけれど」


「他人を売ると? 」


 モミジの言葉にナイトメアが顔をしかめる。

 真っ白な人型の靄のようなナイトメアが顔をしかめたところでその差分が通じることはないのだけれど雰囲気でそれは通じた。


「人聞きの悪い、ただちょっと私の代わりになってもらうだけ」


「それを売るというんですよ」


 先程と真逆の立場でやり取りを行う、そのことに何かおかしさを覚えてモミジは少し吹き出す。

 合わせてナイトメアもクックックとのどを鳴らして笑う。


「いいでしょう、契約成立です。

あなたを精神世界から解放する代わりに私の器を探す。

無期限無利子無担保の契約です」


「えぇ、無期限無利子無担保ね」


 モミジはナイトメアの言葉を復唱して、頬を釣り上げた。

 しかしその直後、足元から強い光を感じて目線を下げるとそこには魔法陣が描かれており、そこから光が発せられている。


「あ、用心の為契約の魔法を使わせてもらいましたよ。

嘘つきなモミジさん」


「……いい度胸ね」


 ナイトメアの行動に、モミジは青筋を浮かべながらも笑顔を見せた。

 反面ナイトメアは霧のような肉体であるにもかかわらず笑顔とわかるそれを全身で表現している。


「わかった、せいぜい器見つかるまでは仕事してもらいましょうか」


「かしこまりました、マイマスター」


 モミジのあきらめにも呪詛にも似た言葉に立ち上がって恭しく頭を垂れたナイトメアに対して溜息を隠し切れなかったものの直ぐに景色が反転した事でモミジもひとまずは良しとしておくことにした。





「さて、マスターにウソをつかれないように先手を取ったのはいいとして……あとはいかに気に入られるかですか。

こんなことなら素直に町のもぐりこんで国の重鎮にでも憑依しておけばよかった……」


 ナイトメアの小言を聞くものは、一人もいなかった。

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