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慢心ダメ絶対

 アンデットとの戦いは、開始5分で終わりを告げた。

 モミジの放った【サンクチュアリ】はナイトメアを中心とする肉体を持たないもんすたーを一瞬の抵抗も許さずに消滅させ、逆にアンデッドナイト等の肉体を持つモンスターはソシエの【無の衝撃波】によって消滅した。

 それは、一瞬の出来事であり後はソシエが倒しきれなかったモンスターや、射線から外れていたモンスターに適当な魔法をぶつけるだけの作業となった。


「圧倒的だったね」


 モミジはさらりと言ってのけるが、圧倒的というのもおこがましいほどの結果だった。

 ナイトメア率いるモンスターたちは軒並み消滅、対してモミジたちには一切の損害はない。

 強いて言うなら避難誘導のために多少の人員を割いたことによる人件費と、避難の際に転んでけがをした数人くらいのものだ。

 だからであろうか、モミジたちは油断しきっていた。


『モンスターの大群街の東』


そのメッセージは街の東を見張っていたシティからのものだった。

そしてメッセージを開封すると同時に、右手側で【無の衝撃波】が放たれたのを確認して、モミジは走り出した。

シティ、レベル500の魔法使いだがその本職は魔法役を作ることにある。

そのためモミジと比べても、魔法の威力は高くない。

もちろん生体核兵器と呼ばれる魔法使いなので強い部類に入る。

けれどそれはどこまで行っても強いだけであり、最強ではない。


「うわっ! 」

 

 モミジはシティが守る町の東側についてすぐに声を上げた。

 シティが魔法を放ち迎撃している相手はアンデッドではなく、人型のモンスターだった。

 それらは通称亜人種と呼ばれ、ダイゴ達の戦闘訓練を行ったゴブリンやコボルトもこれに含まれる。

 その亜人種の特徴は、繁殖力の高さにある。

 こちらの世界は生命力の強い生物ほど繁殖力が低い傾向にある。

 一部の例外はいるものの、ドラゴンのような生物の繁殖力はとても低く、20年に1匹子供を産めばいい法とされている。

 それに対して亜人種は、1月に10匹の子供が生まれるとされている。

 これはゲーム時代には裏設定とされていたものだが、こちらの世界では現実と考えるべきだろう。


「さすがにこれは異常でしょ……」


 モミジはそう呟きながら【無の衝撃波】の詠唱を始めた。

 魔法として放つには余裕があるが、いざということを考えると戦力を温存しておく必要があるからだ。


「【無の衝撃波】」


 モミジの放ったそれは大軍の中央を消滅させるが、まだ半数近い数が残っておりその進行速度から察するに詠唱をしている余裕はない。

 隣でシティも【無の衝撃波】を放っているがソケットはもちろん、モミジの物に威力も範囲も及ばない。


「しょうがない……無の衝撃波! 」


 モミジは魔法として無の衝撃波を放つ。

 これにより残った数は当初の10分の1程になっており、対処は十分に可能だろう。

 そう考えた瞬間、いましがた大軍とともに吹き飛ばした山間から高速で何かが飛来するのをモミジは確認した。

 それは、ナイトメアの姿だった。


「ぐふっ」

 

 慢心と、一瞬の隙を突かれたモミジはナイトメアの侵入を許してしまった。

 それは防衛ライン内への侵入ではなく自身への侵入だ。


 ナイトメアの能力、【憑依】は体を持つ生物に憑依し思いのままに操ることができるというものだ。

 その成功条件はいたって単純であり、自身のレベルまたはMPが対象を上回っていることである。

 これは数多くのプレイヤーによる検証の結果分かったことであり高レベルのプレイヤーが気づかぬうちに憑依されていたという報告がある。

「油断しすぎた……」


 そう言いながらモミジはポケットへ手を伸ばそうとするが、それは叶わず、どころか意識が遠のき始める。


「くっそ……」

 

『夢の中で……』


 モミジは自分の中に響いた言葉を反芻しながら、意識の意図を途切れさせた。

 後に残ったのは残党を襲う、応援に来たプレイヤーたち。

 そして必死にモミジに魔法薬や聖水を浴びせるシティと息苦しそうにうなりながらも目を覚まさないモミジだけだった。

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