開戦前
モミジがメッセージを飛ばしてから10分と待たずにプレイヤーが現れ始めた。
まず最初に現れたのはモミジ同様魔法使いを選択し、紆余曲折を経てレベル500まで上り詰めた者達だった。
その数わずか4名、モミジを含めても5人しかいない。
この5人という数、実はドミナスオンラインの現役プレイヤーで数少ないカンスト魔法使いである。
「2万の軍だって?
モミジ一人でも余裕じゃないの? 」
開口一番にそういってのけたのは最古参の魔法使いプレイヤーであるシティだ。
彼はモミジと違い戦闘特化型ではなく、ライン同様生産職側の人間だがそれでも規格外の魔法が放てる事にかわりはない。
「うちこぼしが出たら面倒だからね。
その手伝いをお願いしたいのよ。
ただあんたらは私と一緒に最前線ね」
最前線に魔法使いが出る、言葉だけ聞くと冗談にしか聞こえ無いが集団戦闘を行う場合一番理にかなっていると言える。
それは魔法使いの攻撃力と攻撃範囲の広さゆえに仲間を巻き込んでしまうという事に起因する。
後ろから援護をする、そうすると仲間を巻き込んでしまう。
ならば、最前線で魔法を撃って相手を近づけさせなければいい。
それがある種魔法使いを用いた集団戦のセオリーだった。
もちろん防御力は低いのである程度撃ったら離脱というのもその中に含まれるが、2万程度であればモミジ一人でもどうにかなる数だ
そうしているうちに二番手三番手が次々とモミジの前に現れる。
「お待たせ」
「2万だって?
ねえ最前線行きたい! 」
次に現れたのは騎乗スキルを持ったプレイヤーと、速力特化のハンターだった。
騎乗スキルは書いて字のごとく馬に乗るためのスキルだが、実は馬以外の物に乗ることもできる。
例えば四足歩行のモンスターであればその対象になる。
そのため、というよりはそのことが原因でこのスキルを保有できるのはサモナー職か上位の剣士職のみとなる。
また、これはこちらの世界限定だが夜の営みの際にも多少の影響が出ているようだ。
そして最後に現れたのは、速力を犠牲に防御と攻撃に才能を割り振った前衛職の者達だった。
彼らは移動速度こそ他の物より劣るが、物理的な攻撃力に関しては他者の追随を許さない。
それは近接戦闘となれば発揮され、アサシンスタイルのハンターと組めば壁とも目くらまし役ともなることができる。
また魔法使いの場合はその限りでないが、賢者のような後衛職であれば完全な盾役として。
サモナーであればその護衛役としてさまざまな活躍が可能な職業の者たちだ。
その分器用貧乏とされることも多いが、高レベル体になれば万能とされる。
特に今回のような防衛線において、彼らを配置すればそのラインを抜けることは不可能に近い。
「あと一時間くらいで敵はここに到着する。
まず私とソシエの2人で広範囲大規模魔法を打つ。
その後は狩人型のハンターのみんなで撃ち漏らしをスナイプして。
アサシン型はどさくさに紛れて生き残りに聖水使って攻撃。
罠型の人は防衛ラインの前に足止めと継続ダメージ系のトラップ。
最終防衛ラインには剣士職のみんなにお願いする。
それ以外の職業は最終防衛ラインの後ろで援護をお願い」
頭数がそろったことでモミジが全員に指示を出す。
この手の作戦を考えるのはモミジの得意分野だった。
「シティ、トール、レックスの3人は街の東、西、南の方向を監視。
何かあったら魔法で応戦しつつメッセージを飛ばして。
敵はもうすぐそこだよ、みんな頑張ってね」
そう言って、モミジはソシエという魔法使いプレイヤーと最前線に向かっていった。