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相違点

 スキルを選択し太翌日モミジは三人をひきつれて幻獣の洞窟を訪れた。

 しかし進めど進めどモンスターは現れず、【サーチ】にモンスターが引っ掛かることさえない。


「まさかまだリスポンしないとは……」


 モミジはこの現象に心当たりがあった。

 ゲーム時代、一度だけモンスターがリスポン、つまり復活していないダンジョンに突入して手ぶらで帰ってきたことがあった。

 このリスポンというシステムは何時間たてばモンスターが復活する、というふうに設定されているがそれはあくまでもゲーム時代の話である。


「もしかしたらこういう細かい点でゲームとは違う仕様になっているのかも」


 モミジの言葉に初心者三人が首を傾げる。

 そもそも昨日一日で初心者組の、職業スキルをコンプリートできたこと自体が異常だとモミジは気づく。

 たしかに現実時間で丸一日モンスターをたたき続ければそれも可能だろう。

 しかし、ゲーム内での時間で丸一日モンスターをたたいてもその効果はたかが知れている。


 ドミナスオンラインでは一時間を60秒と設定されていた。

 それはつまり、現実の時間で一秒が過ぎるとゲーム内では一分の時間が過ぎるという事になる。

 その常識が変わった、ならば他の常識も変わっていると考えるのが道理だろう。


「全員いったんここから出よう」


 モミジはそういってすぐに出口に足を向ける。

 そしてそのままメニュー画面を開き、フレンドリストを開いて一斉配信のボタンを選択する。


『発魔法使いモミジ宛信愛なる馬鹿どもへ

この世界とゲームの相違点が多数存在する。

わかっている範囲でいいので拡散希望。

対価は用意する』


 モミジはメッセージを送信して、後ろにいるダイゴ達に視線を向ける。


(もしかしたら私は彼らを守る以前に、自分の身を案じたほうがいいのかもしれないのかな)


 1人、そう考えながらも請け負ってしまった以上投げ出す気はないと決心したモミジは懐に手を入れて、そして少し落胆して手を引き抜く。

 それからは何度かつまずきながらも洞窟の外に出て、即席の馬車でエリカラスの街へ転移した。


 そしてエリカラスで宿をとった頃、モミジのフレンド数人からメッセージが届いたことに気付く。


『発教授宛親愛なるわが妹分へ

気付いた範囲だと時間が現実の流れと同じ。

あと魔術のリロードが秒単位へ変化してる。

それと、これはまだ可能性でしかないけれど魔法使いや賢者でも斧が装備できそうだ。

対価は古代魔術の取得方法で頼む』


 教授、というのはモミジとほぼ同時期にゲームを始めたプレイヤーで魔法を使いたいが、魔法使いを極める自信はないと賢者を選択したプレイヤーだ。

 賢者のスキルは魔術と呼ばれ、魔法と違い単体攻撃の魔術が多い。

 また状態異常付与やステータスのアップダウン系の魔術が使える。

 魔法使いの不人気に拍車をかけている職業の一つだ。


 この賢者は使い勝手はとても良い。

 だが魔法使い同様筋力や防御力が上がりにくく、後方支援を重視した職業とされる。

 そのため装備できる武器は杖などの魔法関係の物、鞭やナイフのような軽量の物ばかりで斧等の重量武器を装備しようとするとシステムに弾かれてしまった。

 しかしそのシステムがなくなった今、非力な職業でも重量武器を扱う事が出いるかもしれないというのは大きな発見だった。


『発モミジ宛親愛なる兄貴分へ

情報提供助かる、古代魔術は古代都市イセリアの太古の賢者というNPCの話を聞け

ただしゲーム時代の情報』


 教授に返事を出したモミジは、続けてほかのメッセージにも目を通す。


『発スピリー宛親愛なるロリへ

スキル取得の限界がなくなっている。

対価は一時間はぐらせてくれ』


 このメッセージを開いたモミジは慌ててメニューを開く。

 そしてスキル一覧を選択すると、ゲーム時代は存在しなかった空白が存在する。

 ゲーム時代個人が取得できるスキルには限りがあった。

 例えば魔法使いであれば魔法を扱うスキル、モミジでいうところの初級魔法等の他にレジストスキルやエンチャントスキルなどが存在する。

 しかし、モミジは魔法使いの本願は魔法を使う事という持論を曲げず、魔法のみを追求したため所持していなかった。


 それらのスキルを震える指で選択し、取得します YES/NOと表示されたメッセージのYESを選択した。

 そして、スキル項目には☆のついていないエンチャントと書かれたスキルが表示される。


『発モミジより宛親愛なる愛煙家へ

お前最高、二時間でも三時間でもはぐらせてやる』


 興奮のあまりモミジはスピリーへメッセージを送ってしまったが、そのことを後悔するのは興奮の冷めたころになる。

 しかし今のモミジはそのことに気付くはずもなく、取得できるスキルを片端から取得していった。


 そして、一時間ほど経って肩で息をしながらスキルを眺めていたモミジが思い出したかのように他のメッセージを確認する。


『モミジへ

発宛の挨拶めんどいからやめない?

私が気づいたのは性別の変化。

つーかネカマがアバターの姿でこっち来たもんだから男だった女ってのが存在する。

その逆もいるみたいだけどそっちはそれなりに楽しんでるっぽいよ。

うちのパーティのレオンなんか俺のビッグマグナムがって風呂で泣いてるくらいだったけど。

対価ねぇ……今度会った時にご飯でもおごってちょうだいな」


 性別、という話を受けてモミジはふと思い出す。

 奴隷を買いに行くと言い出した男を見てへこんでいた女性が数名いた。

 あれはもしかしたらネカマだったのかもしれないなと。


『ミオンへ

この挨拶なんか面白いんだよね。

はち切れるまで食べさせちゃる』


 それからも数件のメッセージを確認しては一人ひとりに礼をして、他の三人にまとめた情報を教える。

 その後再び一斉送信で今回得た情報をフレンド全員に拡散したところで、日が暮れていることに気づいた。

 その日はそのまま食事を済ませ、雑貨屋で服や杖、そして魔力石というアイテムを大量に購入して宿に戻った。

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