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スキル上げ

幻獣の洞窟、モンスターの平均レベルが100を超えるダンジョンである。

このダンジョンを安全に攻略できるようになれば半人前を卒業したというのがドミナスオンラインの常識だった。

しかし、そのためには最低でもレベル200を超えなければならない。


そんな洞窟で、カーンカーンという音が一時間の間途切れることなく鳴り響いている。


「そろそろ飽きてきた……」


音の主は、モミジ率いる三人の初心者と、麻痺のせいで満足に動くことのできないモンスターだ。


「はいはい、いいからたたき続ける」


モミジが彼らにやらせているのはスキル上げだ。

ドミナスの世界では強敵と戦った際にスキルが大きく伸びるとされている。

システム的に言うなら自分より高レベルの相手と戦うとスキルが上がりやすいという事だ。


「でももう一時間たちましたよ」


ソケットがナイフでペちぺちとモンスターをたたき続けているが、当のモンスターは全くダメージを受けていない。


「じゃあ今日一日たたき続けてね。

大丈夫、ここにいるモンスターは残らず麻痺してるから。

三日くらいは動けないと思うよ」


モミジの言葉の通り、今現在洞窟にいるモンスターは一匹残らず麻痺している。

言うまでもなくモミジの魔法によるものだが、もはやダイゴ達は驚くそぶりも見せない。

単純作業を繰り返し過ぎたことで眼が死んだ魚のようになっている。


「……ハンバーグ」

「ぐりずりー」

「リンゴ」

「ごぼう」

「海の幸」

「腸詰」

「目玉焼き」

「きんとん……あ」


ダイゴ達はしりとりをしながらモンスターをたたき続ける。

食べ物ばかりなのは元の世界の食事を思い出してだろうか。

ドミナスの世界の料理は決してまずくはない。

けれど現代の料理に慣れ親しんだ一同にとっては物足りないものがあった。


大きな街に行ければ現代の食事とそん色のない者もあるかもしれないが、小さな田舎町のローリエにそれほど大きな店があるわけでもない。

ついでに言えばモミジ以外の人間はろくな料理ができないことが発覚したため、食事当番はモミジが請け負っている。

けれどその味については保証しかねるというのが本人の談。

モミジの料理も不味くはないが何か違和感を感じる味わいを持っている。

塩の一つまみが足りない、胡椒が多すぎるなどの小さな問題がある料理が多い。

体の大きさの変化が食事にまで影響をもたらしていた。


「そうだな……みんなの持ってる武器スキルが今の倍まで増えたら大きな街で食事をしよう」


モミジは見るに見かねてそう提案した。

すると先ほどまでしゃがみながら、まるで木魚をたたくかのように剣を振り続けていたダイゴが立ち上がる。

それに合わせてソケットとレナも立ち上がり、今彼らにできる最高の速度で連撃を打ち込み始めた。


「うわぁ……」


その形相はやらせていたモミジ自身も引くほどの物であり、ダメージを受けていないはずのモンスターも冷や汗を流している。


それから3時間ほどが過ぎて全員の武器のスキルはそれなりのものとなったところで全員洞窟の外に出る。

遅れてモミジが出てきて、洞窟に向かって一発魔法を放った。


「【プローション】」


【プローション】は爆発系の中級魔法で、モミジは依然洞窟系ダンジョンでこの魔法を使い中にいた他のパーティを巻き込んで大量のモンスターを撃破したことを覚えていた。

もっともモミジにしてみれば事故だったのだが、巻き込んだパーティから延々とお説教を聞かされる羽目になったので忘れようにも忘れられない記憶となっている。


「さて、掃除も終わったしご飯を食べにいこっか」


モミジのその言葉に、ダイゴ達は飛び跳ねて喜び、街の食堂で涙を流しながら食事をする集団としてしばらく話題となった。

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