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我が輩は傍観者である  作者: 二色
おぼろげに浮かび上がるもの
6/19

彼女から見た傍観者二人

あけましておめでとうございます

今年もよろしくお願いいたします


というわけで、夏奈ちゃんの親友である神崎梓さん視点です

 私には仲のいい親友がいる。

 親友こと八馬夏奈は、私のへんな趣味ににも付き合ってくれるとてもいい子でお人よしだ。お人よしの域を超えて男前女子だ。彼女は自身のことをモブ、または傍観者と言っている。平凡の塊なんだぜ、と遠い目をして言っていた気もする。私はそうとは思わないけど。


 私は自他ともに認める変人だ。腐女子とよばれる、男同士の恋愛ものが大好きな女子だ。同性愛、異性愛。すべてに対して意味を持つ。同性でも愛があればいいんだよ! 彼女にこう言ってみたら「そうだね」と苦笑されていたっけ。偏見はないようだけど。


 なぜか知らないけど彼女は女子にモテる、異様にモテる。前世は美男子だったんじゃないかと思うくらいにはモテる。男子も嫉妬していた。

 親切な対応、人助け。特に人助けは年上年下関係なしにやっている。彼女は無自覚天然たらしで、非公認で非公式のファンクラブがあるわけだが。…彼女には内緒で私が作らせていただいた。夏奈のことを八馬王子といったのは私がはじめだ。最初は冗談で、広まらないと思っていたのだが予想以上に女子に浸透してしまった。王子やべぇ。


 そんな彼女には片思いの相手がいる。私はその人のことを知らないけど、彼女がその人を語るときはすごく幸せそうだからいつも言わない。…が、私はその人に忠告されてしまった。

 その人の名前は九条冬弥。見た目は根暗だが、彼女曰く「変人」らしい。私とかぶっているじゃないか!


 私はその人に、すさまじい忠告を受けた。


「君、ナツの何? 邪魔する?」

「親友だよ。中学からの友達でね。そういう君は? なんで私に言いに来たのかな」

「邪魔するなら危険分子として排除しなければならないからね。君はどうなんだろう。彼女の親友ならいいと思ったけど、どうも嫌な気分になったんだ。彼女が誰かを呼ぶのが気に入らない。それも僕の知らない名前だ。君はどう思う?」


 私はその時瞬時に理解した。こいつはヤンデレだと。愛されてるね夏奈。私応援してる。


「…私が邪魔をする? そんなことしないよ。でも私は夏奈優先だから、夏奈が嫌がったら邪魔するかもね」


 でも彼女は君が好きなんだけど。その邪魔は絶対なさそうだけどね。

 軽く言って笑う。彼の表情がわからない。長すぎる前髪で、怒っているのか解らない。彼女は声でわかると言っていたが、さすがだなあと思う。


「…ナツが、嫌がる?」

「そう。そういう可能性も入れておいた方がいいよ。どこまでも自分中心だとダメだから」

「ふーん」

「あ、でも君が夏奈のことを好きなら話は別だ。協力してあげることもできる。私は夏奈が幸せならそれでいいと思っているからね」


 含み笑い。私の推測が正しければいい。彼女の恋を実らせてあげたいだけだ。彼女の幸せイコール私の幸せでもある。ああ、私ヤンデレみたいじゃん。違うよ! 好物だけど!


「ああ、僕はナツのことが好きだよ、愛してる。僕の中に閉じ込めてしまいたいほど。でも彼女はそれを望んでいない。それに、今のこの関係を維持したいという思いもあるんだがね。…問題は彼女のたらしなんだが。彼女にまとわりつく男はいるか? あの子の周りの男は全部排除しないといけない。ナツに触れる男は殺さないといけない、触れたところを刻まなければいけない」


 うげえええええ!! ヤンデレこわっ! 夏奈頑張れ!


「できる限り手伝うよ。知らない男を近づけさせないほうがいいんでしょ? 任せろ、得意分野だ。彼女の幸せは私が守る!」

「ありがとう。君のことは覚えておくよ、興味ないけど」


 感情の起伏のない棒読み。マジで興味ないな。多分これ破ったら殺されると思う。そして夏奈は監禁ルートかな…夏奈、ファイト!

 その時の私は安定の図太い精神で乗り切ったが、あれは怖かった。ヤンデレの二次災害とはこれのことですか? ヤンデレは二次元だけで結構! 「夏奈のとこに行ったら?」と提案してその時の忠告は終わったよ!


 そして私は今教室に一人だ。考える人のポーズをとっている。夏奈は朝に起きた出来事について昼九条まおう君と話したらしいが、帰りも話すことになり一緒に帰っている。私は内心ハラハラだ。いつあのヤンデレが本性あらわすのかが気になって仕方ない。

 あの会話内容を思い出すだけで、胃がきりきりと痛むがそれに構ってはいられない。私は思い出してしまったのだ。あの奴隷おとこの存在を…。


 中学からの知り合いで、夏奈に片思いをしている風紀委員長の古橋剛だ。顔と性格の差が激しい奴だ。もはや天と地の差だ。

 そいつは顔だけはイケメンだ。誠実そうで、精悍な男前と言ってもいいだろう。しかし中身はだめだ。もはやギャップ萌えという域を超えてドン引きだ。それで中身チャラ男って、貴様頭の中どうなっていやがる。そんな彼には私からの指導をもとに、堅物風紀委員長を演じてもらっている。妄想の幅が広がっているのでうれしい。しかも! 生徒会長とは犬猿の仲なんだってさ! 王道だね!

 会長は本日初めて会って、鞍馬明宏というらしい。名前だけは知っていたが、実際に話したことはない。だって雲の上の人じゃん? イケメンじゃん? 萌えるじゃん? つまりそういうことだ。

 頭の中でフィーバーしているが気にしないでおこう。会長かけるたけちゃんとかなにそれ萌える。


 たけちゃん、失恋しちゃったね。と思いつつぷぎゃーをしておく。ついでに笑っておく。彼にはこの態度がふさわしい。…が、正直には言わないでおく。彼の面白い反応を見るためにも言わない。ドSの神崎とは私のことよ…! って前に夏奈が呼んでたから使ってみた。


 いい加減帰ろう。一人むなしく帰ってやろう。私ぼっちですがなにか?

 席を立ち、教室を出る。昇降口はこの棟の一階だ。ここは二階だからすぐだ。ああー、夏奈しか友達いねえー、悲しくないよー、夏奈さえいればいいよー。


「あ、お前」

「ああん?」


 昇降口につけば声を掛けられた。なんやねん、と思わず関西弁になってしまうのをこらえたら不良みたいになったんだけど、なんかごめんね見知らぬ人。

 首を動かせば朝見た顔だ。懐かしい。九条君に引きずられて退場した会長じゃないですかやだー。


「会長か、どうしたの? まさかぼっち?」

「言うんじゃない!」

「認めてしまえばいいものの。めんどくさいなあ」


 認めたくないのか。そうかそうか、自己中っぽいもんね、会長さん。

 靴を履きかえた会長が、見向きもせず言った。


「お前の名前、聞いてないと思って。八馬のことは冬弥から聞いたし」

「おうふ、あのヤンデレやべえ。…じゃなくて、私の名前?」


 聞き返せば頷かれる。まあ彼女とよく一緒にいるからなあ。


「神崎梓。なんとでも呼んでくださいな、会長さん」

「神崎、梓な」


 復唱したらしい会長が微笑した。おおう! イケメンの微笑がまぶしい! 後光が差しているようだ! 目が、目がああぁぁああ!!

 ふざけるのも大概しておこうか。ボケツッコミは私と夏奈だから。夏奈ツッコミがいないと虚しいだけだったわ…。かなしいなあ。


「じゃあ、私帰るんで。さよなら会長」

「あ、ああ。じゃあな、神崎」


 名字で呼ばれた。私は少し早足で昇降口を出た。なんかどうしようもない感情だ。

 あーあ、どうしようか。今度九条君に会ったらどうしよう。多分会長また来ると思うわ。あの人どことなく自己中そうだし、夏奈のこと興味ありそうだし。恋愛的な意味じゃなくて、おもちゃ的な意味で。いや、わからなくもないんだけど。彼女は反応が面白いからついかまいたくなる。たけちゃんは例外だ。あいつはただ面白いだけだ。


 もうすぐ高校二年目の夏が来る。

 暖かくなってきた気候に私は、無意識に口角を上げた。

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