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視点は特別な記述がない限り、リヴォルク(リク)です。
「夢……だよな……」
今日は珍しく、目覚め直後の頭の覚醒が遅い。
これは勿論、あの夢のせいだろう。
『……逃げて』
そう、緋い瞳を持った少女はそう言った。
一体何から?
……考えるまでもない。恐らく、追手が近づいているのだ。
彼女がそれを言うということは……未来の俺、もしくはカイやマナが話すのか。
それとも、夢で視る俺の状況から推測したのか。
いや、そんなことはどうでもいい。
重要なのは、彼女の選択によって、未来が変わるということ。
もし彼女が何も言わなければ。
俺は捕まり、牢で同じように彼女に会うはずだったのだろう。
そして、そこで命を落とすはずだったのだろう。
俺の視えるのはその一場面だけだったが、俺の身体は今と同じだったから、恐らくこの推測に間違いはないだろう。
だが、彼女は俺を生かそうとした。
未来が、変わる。
……逃げなければ。
生き延びて……そして、彼女を助ける為に。
名も知らぬ少女は、囚われのなかで、俺を生かそうとしたのだから。
……己の未来も視えなくなってしまうというのに。
何故なら、彼女はきっといつ殺されてもおかしくないのだから。
俺を生かすことは、彼女にとっても賭けだ。
上手くいけば彼女も生き延びるが、そうでなければ……。
……いや、今はそんなことを考えても仕方がない、か……。
……とりとめもなく色々なことを考えてしまうのは、俺の悪い癖だ。
ベッドから身を起こし、周囲を探る。
「……ちっ」
思わず下を打つ。
カイはもう家にいない。あいつの起きる時間を考えれば、当然ではある。
マナは……まだ寝ている。確か、昨晩は情報収集をしていたはず。
二人に追手のことを言わなければならないが……今マナを起こせば、怒りの矛先が俺にしか向かない。
……腹立つな。よし、カイを巻き込もう。
そう思い立ち、音を立てずに家を出て、カイがいるであろう集落の外れに向かう。
……そういえば、今日って一応、俺の誕生日じゃなかったか?
……こんな日に限って追手とか、ツイてない、としか言えないな……。
カイ、マナは名前のみ登場です。
いきなり出して、申し訳ないです。
(登場人物に書いたので、許してくださいm(__)m)
カイは次に登場します(多分)。
読みにくい部分ばかりだとは思いますが、お付き合いいただけたら嬉しいです。