Ⅰ ~リク~
いきなりですが、流血描写があります。
不快に思われる方は、後半からお読みください。
何時もと同じ夢だと思った。
目の前の格子の向こうには、鎖で繋がれた少女が、ベットに腰掛けている。
彼女の視線がこちらを向くことは決してなく、その目は小さな窓から外を眺めているだけ。
そう、何時もと同じ。
だからこの後、少女が影に剣を突き立てられ、命を落とすと知っている。
身を包む白い服を、日に焼かれることを知らない白い肌を、美しくに伸ばされた白銀の髪を、彼女自身の血で赤く染め上げる。
それでも少女はこちらを向かない。
こちらのことを知らぬはずがないのに。
助けを求めることはおろか、視線の一つさえも、こちらへは向けない。
ただ一言、「さよなら」と告げるだけ。
少女がそう告げるから、同じ言葉を返す。
……そして、己に突き立てられる剣を受け入れる。
激痛が身を焼いても、拘束された身体が、崩れ落ちることを許さなくても。
それでも、剣を受け入れること以外はしない。否、出来ない。
そうすることでしか、少女の心を守れないから。
そうすることでしか、多くの人を救えないから。
そうすることしか、出来ないから。
……知っていたから、今日もそうなのだと思った。
「…….逃げて」
だから、少女が漏らした呟きに、思わず耳を疑った。
「え……?」
何が起きているのか、わからなかった。
こんなことは今まで15年間、1度も起きたことがなかった。
そして、少女は初めて、視線をこちらへ向けた。
美しい白銀の髪に、白い肌、そして緋い瞳。
その緋い瞳を、とても美しいと思った。
自分と同じ、否、それ以上に呪われた、緋い瞳。
それ故、理解出来た。
彼女が未来を選んだのだと、理解できてしまった。
「……お願い、逃げて……」
懇願めいた響きに、頷きを一つ。
零れ落ちる涙を拭ってやることは、出来ないけれど。
「……逃げるよ……君が選んだ、未来の為に……」
そして、俺――リヴォルク・ガラルドは、目を覚ました。