表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

Ⅰ ~リク~

いきなりですが、流血描写があります。

不快に思われる方は、後半からお読みください。

 何時もと同じ夢だと思った。




 目の前の格子の向こうには、鎖で繋がれた少女が、ベットに腰掛けている。

 彼女の視線がこちらを向くことは決してなく、その目は小さな窓から外を眺めているだけ。


 そう、何時もと同じ。



 だからこの後、少女が影に剣を突き立てられ、命を落とすと知っている。

 身を包む白い服を、日に焼かれることを知らない白い肌を、美しくに伸ばされた白銀の髪を、彼女自身の血で赤く染め上げる。



 それでも少女はこちらを向かない。

 こちらのことを知らぬはずがないのに。

 助けを求めることはおろか、視線の一つさえも、こちらへは向けない。





 ただ一言、「さよなら」と告げるだけ。




 少女がそう告げるから、同じ言葉を返す。





 ……そして、己に突き立てられる剣を受け入れる。




 激痛が身を焼いても、拘束された身体が、崩れ落ちることを許さなくても。

 それでも、剣を受け入れること以外はしない。否、出来ない。



 そうすることでしか、少女の心を守れないから。

 そうすることでしか、多くの人を救えないから。

 そうすることしか、出来ないから。








 ……知っていたから、今日もそうなのだと思った。





「…….逃げて」




 だから、少女が漏らした呟きに、思わず耳を疑った。


「え……?」



 何が起きているのか、わからなかった。

 こんなことは今まで15年間、1度も起きたことがなかった。




 そして、少女は初めて、視線をこちらへ向けた。




 美しい白銀の髪に、白い肌、そして緋い瞳。




 その緋い瞳を、とても美しいと思った。

 自分と同じ、否、それ以上に呪われた、緋い瞳。




 それ故、理解出来た。

 彼女が未来を選んだのだと、理解できてしまった。



「……お願い、逃げて……」




 懇願めいた響きに、頷きを一つ。

 零れ落ちる涙を拭ってやることは、出来ないけれど。




「……逃げるよ……君が選んだ、未来の為に……」






 そして、俺――リヴォルク・ガラルドは、目を覚ました。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ