5/5
フェル兄そして、小さな女の子Ⅲ
とりあえず、フェル兄に言われたとおりに彼女が飛んでいった方を見る。すると急に風が僕らを中心に吹いた。
「そこ、手入れてみ」
フェル兄は顎で特に空気の層が厚い所を指す。とりあえず、言われたとおりに手を突っ込む。すると、何か温かい物が触れた。それを掴み、引っ張ってみる。中から出てきたのは、先ほどフェル兄に投げ飛ばされた女の子だった。
「リーフ!」
指を彼女の口元に当てると規則通りに呼吸をしていたので、一安心。顔色も元に戻っている。まるで眠っているようだった。安心し、ほっと息を吐く。
「こいつは、風の妖精だからな」
フェル兄が淡々と語りだす。ようせい、物語の中でしかでてこない生き物だ。僕が不思議に思うのをわかっていたかのように、続けて口を開く。
「この国には、ほとんどいないからな。でも他国に行くと、うじゃうじゃいるぞ。ピクシー国なんかは実質、妖精の国だ。この国は魔のない国として成り立っているから、知らないのも無理はない。そしてこいつは、羽に濁りがあるから誰かの使い魔であると予想される。