約束
僕の初めてできた友達は、ある日唐突にこんなことを言った。いつものように、遊んでもうそろそろ帰ろうとしていた時だった。
「私と貴方はいつか別れなくては、いけないわ。」
「僕、もっと君と遊びたいよ。離れたくないよ。」
すかさず、僕は言った。初めてこんなことができる友達を見つけたのだ。離れたくはない。
「今とは、言ってないでしょ?話を聞いて。でも、私たちはいつか別々の道へ進むの。私だって、貴方と一緒にいたいわ。ずっと、ずっと、貴方のそばにいたい。でも、それは叶わないの。わかった?」
最初はいつものように、上品な口ぶりだったのにだんだん、声が高くなってきた。僕には、彼女が言っている意味がよく分からなかった。でも、僕はその意味を聞かなかった。それは目の前の彼女が今にも泣きそうで、いつもキラキラしているクリクリの目がいつも以上に大きくなって、今にも目から飛び出しそうだったから、今にも出てきそうな涙を我慢していたから、僕は何も聞けなかった。いや、聞けなかった。聞いたら、彼女の努力が無駄になってしまうと思った。僕がうなずいたのを見て彼女は話を続けた。
「だから、もし、私たちが分かれたら、プーパの国に来て。そこに、私は、いるわ。」彼女はそう言った。
「だからね。私たちは、また会えるの。信じていれば、会えるの。だから、それを・・・」
リゴーンリゴーンリゴーンリゴーンリゴーン
その時、5時を知らせる鐘が鳴った。この鐘が、鳴ったら僕らはまだ、たったの5才だから家に、帰らなくてはならない。それが、この村の決まりだ。僕と彼女は、立ち上がった。その時だった。彼女の頬が線を描いて、夕日に反射して光っていたのに気がついたのは。
「だから、それを、そのことを、絶対に忘れないでね。」そう言いながら、彼女は僕の家がある方向とは逆の、自分のうちへかけていった。いつも付けている大きなリボンを揺らせ、きらびやかなドレスの袖で、顔を拭きながら。
「絶対に、忘れないよ。」僕は、彼女が向かけて行った方向に、約束した。
そして、次の日。彼女はこの町から、僕以外の人たちの記憶から消えた。