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忘却の淵に沈む英雄と優しすぎた狂獣 (仮)  作者: 無貌
悪役とヒロイン主役の足りない三文芝居 
6/13

今日も夜勤しないで直帰だ!アインをあまり一人にしておけないから。(経験則から)

アインは成長したんです。目に見える形だけじゃなくですが…。

あの話の後安井と一緒に昼飯を食べ、(その際焼き魚定食と煮魚定食のどちらがいいかで口論になったが…。)その後何時も通りにデスクワーク。特に語る事無し。


それをささっと終わらせてふと時計を見ると六時半を回っていた。(いかん!晩飯の用意頼んでねえ!)と、思い買い物をしないで急いで帰宅した。アインに携帯を持たせようかで悩む今日この頃である。


玄関の前でズボンのポケットから携帯を出して時間の確認。七時ジャスト(煮魚を冷蔵庫に入れといたが用意してくれているだろうか?)と考えつつ

「すまん今帰った!晩飯の準……ん?」


そう言って鍵を開けて突入するとやはり晩飯の支度はしていなかった。それはまあいいが何時もなら飼い犬か飼い猫のごとく玄関に突撃してくるアインが電気もつけずに何かを見ている。

偶に余り綺麗とは言えないこの一人暮らしのおっさんの部屋の色々な物が入っている押入れをあさっては興味のあるモノ(主に書物の類)を読んでいる事がよくあった。

その時でも一様返事ぐらいしていたのだが今回は珍しく返事もしていない。(そんなに熱中する様なものあがこの部屋にあっただろうか?)

そう思ってフローリングにおいた大きめの本?の様な物にかぶりついているアインに近寄る。


「今度はまた何をよんどるんだ? ッ!?」覗き込んで見た時息をのんでしまった。

それを知ってか知らずかアインがこちらに気づき

「わっ!びっくりした~。おっとまず挨拶だよね、お帰りなさい!…?どうしたの幽霊でも見た様な顔して?」

そう言われたのに俺は声を出す事ができなかった。彼女が読んでいたモノが自分の中で忘れさったものであったから。思い出す事を否定したいものだから。

「ん~?まいいや!」そういうと本からぴらっと一枚の写真を取り出す。

仲の良さそうな家族の写真だ。右下の日付を見るに六年前、まだ俺が高校生の頃の写真だ。

たぶん高校最後の夏休みの写真だったと思う。が、心がそれ以上思い出す事を拒否している。


「これって写真だよね!前テレビで見たから解るんだ。んで、これに写ってるのってじんの家族?皆どことなく心に似てるし、皆笑顔だし。それにこれ心の実家てやつだよね。………あれ?」

そこまで言うとこちらの様子がおかしい事に気がついたのか口が止まる。

すると今度は急に慌てだして

「心!どうしたの!!顔が真っ青だし今にも泣きそうな顔してるよ!どこか痛いの?それとも苦しの?」

「だ、大丈夫だ。何ともない!ハハッこの程度で俺がどうにかなると思っているのか!!」と、何とか強がって見せた。

それでも不安そうな顔をしてアインがなおも尋ねる。

「わたしが、私が原因だよね!私、わたしなんか傷つける様な事言っちゃた…よね。ごめんなさい。」

青菜に塩と言っていいほどにみるみるうちに萎れてしまった。

「いや!違うぞ!!これは俺が弱いからだ。俺がいまだに向き合えないからであってお前に非は無いさ。」

「でも!でもお!!」

「ああ!解ったわかった!事情説明するからまず落ち着け!」

「………解った。」

そう言ってちょっと落ち着かせ買い置きのオレンジジュースをコップに注いで「ホレ」と差し出す。

「ありがと。」と言ってニヘと笑う。この辺りはまだまだ子供だ。


座る物などほとんどないので二人並んでベッドに腰掛ける。

「スーハー、それじゃ話すぞ。あんまり聞いてておもしろい話じゃね―からこれ以上聞きたくない時は俺に言え、いいな。」

「解った。けど、そんに面白くないの?」

「まあ、少なくとも誰かに面白可笑しく話すこっちゃね―な。」

「そうなんだ。」

本来ならあまり親しくない関係ならここで聞くのを止めるだろう。親しい関係であったとしてもあまり突込んだ話はしようとは思わないだろう。

それはそうだろう。これは 


俺のトラウマの話なんだから。


「俺はもともとここらの生まれじゃあ無くてな、東海地方の生まれなんだ。東海って解るか?」

「愛知県・岐阜県・三重県・静岡県の4県の事だよね。」

「ほんとそういうのは得意だよなお前。」「エッヘン!」

「口で言わんでよろしい。フゥ…続けるぞ。俺はその中でも静岡の方の生まれでな。そこで育って近所の大学行こうと思ったんだが、どこも失敗してな。こっちの大学しか受からんかったんだ。」

「それってここら辺の?」「そういう事。」

「一人暮らし始めて最初の一年はちょくちょく実家にも帰っていたんだがな。そのうちこっちでのバイトも見つかったし友人もできてきた。実家に帰る事も少なくなったある日にだ。」

「あ、ある日に?」

「俺以外の家族全員が交通事故で亡くなったっていう電話があった。」

アインの顔が一瞬にして凍りつく。その表情のまま

「!?それって事故か何か?」

さらに訊ねてきた。そう思う俺も相当しみったれた顔をしている事だろう。この話を他人にするのはあれ以来何だから。

「ああ。酔っ払いが運転していたダンプトラックが信号を無視して横からドッカーン!右側に乗っていた兄と父は即死、母は全身を強く打って意識不明のまま病院に運び込まれたけどそのまま息を引き取ったそうだ。」

「そう…なんだ。」苦しそうな表情をしているので提案する。

「もう、止めておくか。聞いて辛くないか?」と。

そういってアインの顔色再度をうかがう。悲しんでいる様な辛い様なそんな表情を浮かべている。

「だ、大丈夫だよ!私そんなに弱くないもん。私よりも心だよ!顔色悪いし辛そうだよ。」

「ああ、そうかもな。……あまり人に話さなかったし、思い出すとつらくなるから心の奥底にしまいこんでいたからな。続けるか?」

「うん、お願い。」

「その後は一度実家に帰って葬儀なんかもした。つってもその辺りは祖父母がやってくれたんだがな。それが終わった後あんまり覚えてないんだ。毎日学校にも通わないでぶらぶらしていた。そんな様子を見た紫苑て奴、ああこいつは大学で出来た友人何だがな が家にやってきてなそんな俺に喝を入れたんだ。」

「喝を入れたっていったい何したの?殴り合いでもしたのドラマみたいに?」

「ハハッ、その通りだ。安っぽい少年漫画やドラマのワンシーンみたいに殴り合い地上をしたよ。あいつ喝を入れるためとか言ってなめっちゃツエーんだぞ。ボコボコニされてよ、一様こっちもそれなり殴ったけどちっとも効かないんだぜ反則だよな!」


そう言って俺はけらけらと笑う。アインはその話を聞いて目を点にしている。

あの時はひどかった。紫苑が俺の部屋に来たと思ったら。

いきなりバシーン!だ。それに頭にきて表に出ての乱痴気騒ぎだ。殴って殴られて殴られて殴ってこんな感じでこっちが一発殴れば二発返されるんだ。勝てるわきゃねーよな。

それもってどっちも動けなくなった所でぶっ倒れてお話開始だもんな~。全くどうかしてたよあの時の俺は、今思い買いしてもロクな思い出じゃないな。


「何か私が言うのもなんだけど…すごい友人だね。」

「ああ、全くな。一様それで目が覚めてな、遅れた分を取り戻すために勉強もして毎日それなり頑張った。んで今じゃこうして仕事見つけて働いている訳だ。ちなみに今お前と暮らせるのは事故の際の慰謝料と保険何かでかなり懐が豊かだからだ。」

「ええ!?そんな私なんかにに使ってよかったの!大切なお金なんでしょ!!」

そう言ったアインの表情はもう目がこぼれ出さんばかりに目を大きく見開いている。

それを見てあまりな表情に笑い出しそうになるのをこらえて

「良いんだよ。家族の墓も建てたし、加害者《相手》も捕まってる。見たこともない親せきにたかられて殆どない訳でもない。一生を質素に暮らす分なら特に問題ないだけの金はあるしな。まあ、お前を学校に行かせるとなったら話は別だが、生憎お前には日本国籍すら存在しないしな。家族だってこんな孤独なおっさんが不幸な少女拾って養うぐらい許してくれるさきっとな。」

そう言って窓から見える月を眺める。(ま、ほんとはどうだか知らんけどな。)そんなこと思いつつではあるが。

「しかしあんなものまだあったとは、しかもこっちに持ってきた記憶にないってことは……何時持って来たんだ?もしかし無意識だったのか?って流石にないかそれは。」などと小声で呟いていると意を決した様な声が聞こえた。

「…私じゃ」「ん?」

その言葉に俺は振り返る。何時になくしおらしい態度だ。

「私じゃ駄目かな?」「ええと、すまん話が繋がらない。」

急な話についていけないでいたので訊ねる。

「そうはっきり聞かれても困るんだけどさ。ええっと…あのね私じゃ人の家族の変わりになってあげられないかなって、そう、思ったんだけど。」

そう尻すぼみ気味で言う。その様子に俺は呆気にとられる。

つい最近までラーメンン食って感動していたような奴がもうここまで成長したのかと、裏も表もないと思っていたガキンチョがいっちょ前に考えている。このどうしようもない大人の事をだ。

いまだに家族の為に泣く事も出来ない、墓参りにもいけないこの俺の事を考えてくれるのかと。

そう考えると急に


「ブッハハハハ!」「何でいきなり笑いだすのさ~!もう!こっちは真面目に考えたんだよ!!」

「いやすまんすまん!別に馬鹿にしてる訳じゃないだぞ!何だか急に馬鹿らしくなっちまっただけさ。」

そういって顔の前で手を振りながら言う。

「何、こんな小娘にこう言ってもらえるだけで救われるもんだったんだなと思うと急に馬鹿らしくなっちまっただよ。今までこんな事に何時も苛まれてついぞ自殺まで考えてたんだ。それがどうだい!今お前に言われたことでまた頑張れるだからさ!またっくつくづく人間手のは感情の生き物だよな。」

そう笑っていた。その筈なのに


「けど、けど心泣いてるよ。」そうアインは言う。


「ぬ?」そう言って顔にて当てる。

「ホントだな。俺は泣いているのか、こんなにも晴れやかな気持ちなのにな。どうしてだろうか困ったなどうにも止まらんぞ!何でかな!」

その声も今では鼻声になっていた。

それを無言で聞いていたアインが急に立ち上がるとバッと手を広げると抱きしめられた。

「私泣いてる人を慰める方法、これしか知らないから。」

「少々喋り難いぞ、それに 何処で見たんだ…これ。」

「近所の幼稚園。」「俺は子供か!」

「今の心と変わらないよ。私が心にしてあげられる事なんて殆ど無いでしょ。それに心の悲しみを代わりに泣いてあげられるほど私は便利にできてない。だから今泣いている心に今までため込んだ分を泣いてもらう事が今最善だと思うんだ私。だから今は泣いていいんだよ、心。」

そう優しく諭す。(まるで母親だな)そう思いながら。思いっきり泣いたがその間は割愛させてもらう。

男の涙は多くの人の目に曝すものじゃない。


それが原因で晩飯が遅くなったのは言うまでもない。その日は出会ったあの日と同じラーメンにした。



だが知らなかった。いや、知りえるはずが無かったと言うべきか。

それはそうだろう彼は少々不幸な男であって特別な何か思ったモノではない。

世界を壊す歯車が動き始めた事など只の人が知りえる訳もないのだから………そう、それが自身を中心にしたものであったとしても。


日常の一コマはこれで終い。物語はある種の転機を迎えます。

まだ続きますんで気軽に読んでください。

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