砲
出てこいよ、と奴は言った。
同時に、フルオートとの通信回線を繋ぎますか? との文字と、それに関する説明文がスクリーンに現れる。
説明文によると、ケフェウスがこの世界で作ったロボットは根っこの部分ではネットワークで繋がっており、両者が合意すれば自由に連絡を取り合えるらしい。逆に回線を繋がなければ、メールのように相手が一方的に話しかけて来るだけで、こちらの声は相手には届かないようだ。
とりあえず俺は保留、無視する事にした。回線は繋がず放置する。
「出てこい」
返事を返さない俺に苛立ったのか、先ほどよりも感情がこもった声で片山が言う。
出てこいと言われて誰が出るかよ。そう思った。気休めにしかならないだろうが、身を隠す場所が何もない所よりは森の中に隠れていた方がマシだ。
「……自分の置かれている状況ってやつが分かってないようだな」
面倒くさそうに片山が言う。
歯がゆい事にそれは事実だった。
俺は状況を見誤っていた。
森の中に潜んでいれば、荒野よりはマシだという判断は幻想だった。
敵機フルオートは空からゆっくりと降下し、森の入り口に着地した。
そして右手の巨大なライフルを気だるげに森へと向ける。
俺達が潜んでいる場所とはズレた方角に。
現れた時にこちらへとライフルを向けた事を考えれば、センサーか何かでこちらの位置は特定しているはずなのに。
そう不審に感じた瞬間、ライフルの銃口が明滅を始める。
人口の光がほとんど存在しない暗闇の中、暴力的なまでに銃口が輝く。
その光はまるで力を貯めているかのように、あるいは周囲から力を集めているかのように加速度的にその輝きを強めていく。
実弾兵器ではないのか?
まさか、と思った瞬間、
奴のライフル内で縛り付けられていた光が解き放たれた。
荷電粒子砲という単語が脳裏をよぎる。
フルオートが放ったのは16メートルクラスの敵機の半分以上……10メートルを越える極大のビーム。
ビームは進行方向に存在するあらゆるものを溶解、消滅させながら森を貫いた。
一帯は灼熱の地獄となり、直撃を免れた周辺の木々も燃え上がった。
だというのに、それでもまだ満足していないのか奴の荷電粒子砲は凶悪な雷を放出し続ける。
足を消し飛ばされた巨大な木々は落下を初め、未だ足元に居座る光のもとへと落ちていく。
そして仕上げとばかりに奴は銃身をスライドさせる。時計回りに長針が回転するようにビームは森を凪ぎ払い一帯に壊滅的な被害をもたらしようやくその活動を停止した。
夜を切り開いた光輝く虐殺は、そうして幕を降ろした。
もし、わざと俺達がいない方向……時計回りにではなく反時計回りにあの荷電粒子砲で木々を凪ぎ払っていたら、その時はなすすべもなく俺達も消し飛ばされていただろう。
俺は機体を動かし、森の入り口、奴の居場所へと向かう。