始まり
うっかり入れ忘れたりしそうなので、行の頭の一文字空けはしない予定です
住み慣れた我が家の自室で、俺は寝転がりながらアニメを見ていた。
俺こと二条誠は、性格が悪い事を除けば20歳の普通の男だ。
成人してもなお、自分用のロボが欲しいなあなどと考えている駄目人間ではあるが。
もちろんロボと言っても工場などで働く産業用のロボットではなく、メイドロボでもなく、戦闘用のロボが欲しい。
それも一機や二機ではなくドッジボールのチームが作れるくらい大量に。
まあ、メイドロボも貰えるものなら貰いたいが。
しかし、この夢は向こう数十年間叶いそうにない。
当然の事ながら、現代科学ではアニメに出てくるようなロボットは当分作れない。部屋に飾ってあるプラモデルに視線を移しながらため息をついた。
せめて死ぬまでに一度でもいいから乗る事が出来たらなぁ。
などと考えていると、それは起こった。
世界が突如歪みだしたのだ。
同時に、俺は急激な加速を感じた。
「なんだ……これ?」
それは本物の加速ではなくあくまで加速のように感じる何かだったかもしれない。
しかしあまりにも強烈な加速感に、俺の意識は刈り取られていった。
気が付くと、俺は何処かの草原に立っていた。目の前には見知らぬ男。
「気が付いたようですね」
「あなたは……?」
「早速ですが状況の説明を。あなたはとあるイベントの参加者に選ばれました」
男は俺の質問を無視してそう言う。
「イベント?」
「はい。これからロボットを作り、その後異世界へと転位してもらいます」
「……いきなり何言ってんですか、あなた」
俺は思わずそう言う。
「信じるか信じないかはあなたの自由です。納得してもらうまで説明する義務は私にはないですし」
心底どうでも良さそうに男が言う。
「さて、話を進めます。参加者は異世界に転位する前にロボットとパイロットとしての自分のパラメーターを設定します」
男は俺の事などお構いなしにマニュアルを読み上げる用に喋り続けた。
というか実際マニュアルがありそうだ。
「設定し終えると自動的に異世界へと転位します。異世界でどう暮らすかは参加者の自由です。どこかの町でのんびり暮らしてもらってもかまいませんし、手に入れたロボットを使って犯罪に手を染めてもらってもかまいません。どんな生き方をするにせよ基本的にはポイントを集めるのが良いでしょう。ポイントを集めれば、ロボットやご自身の能力を上げられます」
本当だとしたら凄い話だな。
「どうすればポイントを集められるんだ?」
返事はあまり期待せずに尋ねてみる。
あり得ないとは思う。ロボットを作るだのポイントだのバカげてる。
しかし、あの妙な加速からのワープからして異常事態なのだ。
もしかしたら俺は本当に超常現象に巻き込まれており、これから本当にロボットがもらえるのかもしれない。
そう思えてだんだんとワクワクしてきた。
「ポイントを集める方法はいくつかあります。何らかのイベントをクリアするか他の参加者を倒してポイントを奪うかの2つが主な方法です」
「……なるほど」
「ちなみに、参加者にはロボットから降りている際の安全確保のためにボディーガードを一名用意します。ロボットに対しては無力ですが、人間相手には一騎当千の力を有しています」
「ボディーガード……」
確かにそんな存在でもいなければ暗殺し放題になってしまうか。
「ただし、ボディーガードはその名の通り防衛用にしかつかえません。つまり、ボディーガードに敵パイロットの襲撃を命じたり、民間人に対して悪事を働かせる事は出来ません。その代わり裏切る事はありえませんので情報を売られる事などはありません」
「頼もしいな」
「はい。ちなみにこのイベントの参加者は2000人です。仲良くするか敵対するかもまた自由です。私からの説明は以上です。では一度きりのキャラメイク、悔いの残らぬよう頑張ってください。制限時間は20分です」
そう言い残し男は幽霊のように薄れて消えた。
そして代わりに空中に現れたのは19分59秒という数字。
あれが制限時間か。
現れたのはもう1つあった。
それは半透明のディスプレイ。
そこにはロボットのステータスと俺のステータスがこと細かく書かれていた。
ここまでくると、俺はもう、男の言っていた事が全くのデタラメなどとは思えなくなっていた。
取り敢えず本気でステータスを弄ってみよう。
ドッキリかなんかだったとしても20分無駄にするだけだし。
早速キャラメイク、ロボットメイクを始める。
ポイントは全部で300ポイントあった。
これを振り分けてロボットの性能などを決めていくわけか。ポイントはロボットとキャラで共用のようで、ロボットに250ポイント使えばキャラには50しか使えなくなる。取り敢えず俺はロボットのステータスをざっと見てみる事にした。
ロボットのステータスは大別すると、
サイズや装甲、飛行能力といった基礎ステータス。
ビームライフルなどの装備兵器。
必殺技。
テレポート能力や自己修復能力といった特殊能力の四つに分かれるようだ。
取り敢えず一番上にあったサイズの項目をクリックしてみる。
サイズのステータス内には、一本のバーと簡単な説明文があるだけだった。
バーを左に寄せるとロボが小さく、右に寄せると大きくなるようだ。
説明文には、サイズを大きくするとその分攻撃力と装甲にプラスの補正が付く。とも書いてあった。
いやいや。サイズを大きくしたらそのまま攻撃力や防御力が上がるなんてありえないだろ。
と、思ったが、まあその辺りはゲーム的なバランス取りというやつなのだろう。
現実的には巨大ロボットなんてでかい的に過ぎない以上、何かしら巨大であることにメリットを足さない限り、どいつもこいつも小型ロボを作るだろうし。
次に俺は装甲というステータスに目を向けた。