第参話
あれから2時間経った。
一向にハロルドが来る気配がない。
「……」
待ってるだけでも退屈なので、テレビをつけることにした。ニュースをひたすら語っている。
『今日未明、政府は、最近起こっている事件の犯人と思われる【死神】を殲滅するための機関、「アンダーデス」を作り上げたことを発表しました』
「え……?」
てっきりすでに出来上がっていて政府も公認している機関だと思っていたウィオラは、焦ってハロルドに電話しようと電話の前に走っていく。
(ハロルドに知らせなきゃ!!)
息を切らせながら、受話器を取ろうとするウィオラの手を誰かが掴む。
「!?」
殲滅機関が来たのかと相手を見上げる。
相手はフードをかぶり、よく見えないが、ゴツゴツした手を見るかぎり男であると言うことがわかった。
「……あなた……」
「なっさけねぇな……こんなんでビビってんじゃねーよ!!」
その声はあまりにも懐かしく……
「にい……さん……?」
ウィオラの兄、キリア・モノクローム。
3年前、突然行方不明になり、死んだとさえも言われた。
懐かしさに涙がこみ上げてきて、キリアにとびつく。
「兄さん……!! 兄さん……!!」
「わりーな。これからはずっと一緒にいられるよ。ウィオラ。死神として、家族としてよろしくな」
ウィオラは、懐かしき兄の顔を見る。旅をしていたのか、所々に傷が目立つが年は離れているけど顔は自分にちゃんとにていた。
黒い長髪が開放しっぱなしの窓から入ってくる緩やかな風に揺られた。
「……ウィオラ、ハロルド君だったか? 彼が」 『速報です。先ほど一人の青年が何者かに殺されました。名前は、ハロルド・ヴィンテージさんで……』
「ハロルド……? 死んだの!?」
ウィオラは、ニュースに驚き、テレビに飛びつく。
「恐らく、最近公認された、機関の人間だ。俺たち死神は悪い奴ばっかり殺してるってのにな」
キリアは、ウィオラも予想していることを代わりに言葉にだす。
「兄さん!?」
あまり、兄であることを口出すな。とウィオラを制す。
ウィオラは、黙って兄の目を見つめる。
グゥゥゥゥゥ……。
「え?」
「あーわりぃ。腹ぁ空かせてんの忘れてたわ」
そう言って微笑んだ。
その笑み見て、自然とウィオラの顔も綻んだ。
「じゃ、兄さんの分の食事、作るわ」
そう、笑顔で答え、リビングに立った。
自分が朝食べたものと同じものを作り、キリアに差し出す。
「いっただっきまーす!!」
一口、また一口と食事を口に運ぶ。
「うめぇ!! 母さんと同じくらいうめぇ!」
「よかった!!」
兄妹のとても良い雰囲気を壊すようなドアノックと
「死神……」
と言う声が聞こえた。
兄妹の顔が一瞬にして変わり、ドアを睨みつける。
ぎぃ……と扉が開き、二人の男が入ってきた。
「我々ハ、死神ヲ殲滅スル……」
「なんだ? こんな奴らが機関か? けっ。腐ってんな、政府ってのは」
「油断しちゃダメだよ! コイツら、人間だけど感情とかそんなもの、がない」
分かってるよ、と言った風のため息をついて、近くにあった果物ナイフを構える。
「でやぁあ!!」
キルアは、右側の男の心臓目掛けてナイフを投げる。ウィオラも包丁を取り出してきて、左側の男の心臓目掛けて包丁を投げる。
そして、二人の男がひるんでる間キルアは、ウィオラを外に押し出す。
「兄さん!?」
「行けっ!! お前は、この家を継ぐものに俺たちの今に生きる死神の御伽噺を書け!! お前なら出来る!!」
キルアは、男に囲まれ断末魔を上げた。
それが久しく再会した兄との別れだった。