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零話 「夢」
受け継がれる物語はどこかの世代で少しずつ原型を留め無くなっていく。
"おばあちゃん! またあの話聞きたい!"
ーー懐かしい。
"死神さんのお話かい? 好きだねぇウィリア"
ーー夢?
間違いない……。夢なんだ。
おばあちゃんは、2年前に殺されたもん。
私の最大の敵『死神殺し』に。
"そうね。ウィリアも寝る時間だし、寝る前のお話として聞かせてあげるわ"
おばあちゃんは、笑って、あの話を聞かせてくれる。
私はその時、どの位、嬉しかったんだろうね。
"凄く昔の話よ。私たち死神が存在しているのはこの方のお陰なのよ。"
そして、薄れてく意識の中で私はおばあちゃんの昔話を聞いてた。少しは覚えてるよ。おばあちゃん。
"死神の祖先:ハイデルベルク様のお話。今から三百年も前の話よ……"
いつも、祖先様の話を聞いた。寝る前に……何度も……。
最後には子供の話をした。
でもね、忘れた。何度も聞いた話なのにね。おばあちゃん。ごめんね。
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