影の中の蛇
何者かによってスラム街から連れ去られた■■は、たくさんの子どもがいる古いビルの中で殺されそうになる。
恐怖に苛まれたとき、一瞬彼女は目を瞑る———
―――何が起こったのだろうか。
私の目の前には、信じられない光景が広がっていた。
さっきまで銃を向けていた男が倒れている。その上に黒い蛇が覆い被さっていた。
その蛇は、私の影から出てきていた。
「え……」
死んでいる。
しかも私の影から出た何かによって。
「おい!あいつ影持ちだぞ!」
さっきの衝撃音で男の仲間が集まってきたようだ。
私の影から出た蛇は、男の体からゆっくり離れ、男の仲間に襲いかかった。
「うわぁっ!!こっちに来るな!!」
銃を撃つが全く効かない。
「離れて!走って!!」
私は叫んだ。無差別に襲うなんて聞いていない。
私の叫びも虚しく、あっけなく男たちは蛇に喰われてしまった。
私の周りが血塗られていく。
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しばらく経っただろうか。
ほとんど銃声がしない。子供の声も聞こえない。
どうやら生き残ったようだ。
この無差別に攻撃する蛇のおかげで。
何人殺したのかわからない。ただ、近づいてくる人をひたすら喰っていた。
『なんで………』
悔しい思いと、やりきれなさで立ち尽くしていると、
遠くから足音が聞こえた。
少しずつ近づいている。
「駄目!近づくと危ないから下がって!」
声をかけるが足音は止まらない。
「来ないで!!」
人の影が見え始め、蛇は人の気配を感じて身構える。
コツ……と足が光に照らされた瞬間、蛇が襲いかかった。
その瞬間、蛇の頭に手が添えられ、蛇がぱらぱらと細かくなって消滅した。
光を浴びて姿を見せたのは、黒髪の1人の青年だった。
目にかかる黒髪の間から緑の瞳が見える。
黒いコートに身を包み、まるで闇と同化しているようだった。
「大丈夫か」
その言葉を聞いた瞬間、涙が溢れた。
怖かった。自分で制御できない影が人を殺すのを見るのは。
「辛かっただろう。もう大丈夫だから。」
「あなたは……?」
「私は『レ・ゾンブル』の隊長の千影だ。
君は……影狩か?」
「違います。無理やり連れ去られて何も知らないままここで……」
これまであったことを話した。
「大変だっただろう。でももう大丈夫だ。
君の影から出た蛇は影獣と呼ばれていて、『レ・ゾンブル』は影獣を扱う組織なんだ。」
「影獣………
あの、影狩というのは?」
「その影獣を集めているのが影狩だ。」
「集めるって……」
「宿主を殺すと殺した人に宿主が移るんだ。
ここは私達の組織と友好関係にあってね。影獣を所持していたんだが影狩に狙われたんだ。
君たちは何も知らされず、影狩の手下としてこの組織の壊滅をやらされていたんだ。」
「そんな………私が全部」
「気にする必要はないよ。私は君を殺しはしない。むしろ、歓迎したいんだ。」
「え………?」
「レ・ゾンブルに入る気はないか?
君の能力なら、きっといい操者になれる。」
「生きるために」
私はゆっくり頷いた。
これが、私と影の物語の始まりだった。




