影の中の蛇
昔々―――とあるスラム街。私は今日も盗みをはたら
いていた。
食べるものがない。
地下の廃下水道の中、静かに1人で暮らす。
『まだ死ねない、私はこんなところでは絶対……』
まだ齢8のか弱い体ながらも生きる気力はとても強かった。
とある日、私はいつものように盗むものを見て回っていた。
『今日はパンが外で売ってる日……』
周りを見ながら街中を1人で歩く。
突然、背後から手が伸び、体を掴まれ口元に布を当てられた。
『!?』
声を上げる間もなく私は暗い意識の底へと沈んでいった。
悲鳴が聞こえ、はっと気付き飛び起きると、暗い部屋の中だった。
古いコンクリートがうっすら月明かりに照らされていた。
「ここは………」
悲鳴が聞こえた方を見ても、人影はない。
時折、悲鳴や叫び声が遠くから聞こえてくる。
『どうしてこんなところに?しかも悲鳴は子供の声。しかもたくさんの。』
銃声が聞こえるようになってきた。
どうやら私のような子供がたくさんここにいて、何らかの理由で追われているようだ。
私は立ち上がり、周りを見渡した。
近くに落ちていたナイフを拾い、手に握りしめる。
『絶対使えないけど……ないよりマシだよね…』
怖い。
銃声が鳴りやまない中、ひたすら死ぬのを待っているようだった。
頬に伝わるのは汗なのか涙なのか、分からない。
止まらない悲鳴。悲痛な叫び。
『だめだ、弱気になっちゃだめだ。生きて帰らなきゃ』
そう決意した矢先、銃声が近くで鳴った。
「おい、絶対この辺にもいるぞ。探せ。」男が言う。
壁にとっさに隠れたが、間に合っただろうか。
恐怖で手が震える。足が竦む。
しかし位置が悪かった。
月明かりに照らされていたため、自分の影が隠れていなかったのだ。
「おい、そこに隠れてるぞ。」
『ばれたっ……』
「手を上げて出てこい。ナイフは捨てろ。」
仕方なく、男の言う通りにする。
手を上げて、男の前に出る。ガタイの良い男は銃をこちらに向けながら、
「情報を吐け。知ってること全部。」
と私を脅した。
「何も知りません。私も連れてこられたんです。」
正直にこれまでのことを話した。
しかし
「そんな訳ねえだろ。嘘をつくな。お前らは影狩だ。影を奪いに来たんだろ!」
男は銃を突きつけ、こちらを睨む。
『影狩ってなんだ……?影を奪うって……』
男は引き金を引き始める。カチリ……と触れる音がする。
『死ぬ……こんなところで…死にたくない』
死に対しての恐怖心が増していく。
怖い、死にたくない。
死にたくない!!!
思いが強くなり、恐怖に体を奪われる。足が竦む。
一瞬、目を瞑った。
―――何が起こったのだろうか。
私の目の前には、信じられない光景が広がっていた。
さっきまで銃を向けていた男が、私の影から出てきた蛇によって殺されていたのだ。
「ひっ……」
自分の影から出てきた物だとしても恐ろしい物には変わりなかった。




