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電光シリーズ データベース  作者: 暗室経路
※【一章 -電光のエルフライド- 前編】終了時点の情報
3/16

2 △タガキ・フミヤのエルフライドレポート

※これは、タガキ・フミヤが1985年4月14日、日曜日に仕上げたレポートです。エルフライドについて深く考察されています。


【注意】本投稿は、電光で示された情報をまとめ、閲覧を容易にするために作成されたものです。

 読み初めて間もない方が閲覧した場合、ネタバレになる可能性があるので、章タイトルを参考にして頂き、読み進めて頂いた部分のみの情報を閲覧していただくよう、推奨します。

 1985年4月14日 日曜日


 電光中隊兵員 各位   

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 エルフライド戦における基本戦術

 目次

 •第1章 エルフライドの特性と共通認識

 •第2章 基本戦術

   o第1節 対「宇宙勢力」エルフライド戦

   o第2節 対「国家戦力」エルフライド戦

   o第3節 各国家の想定されるエルフライド戦術

 •第3章 エルフライド戦における通信戦略

   o第1節 通信機能と戦闘への影響

   o第2節 地上部隊との連携

 •第4章 エルフライド戦における認知戦・情報統制

 •第5章 次世代エルフライド戦の展望

 •第6章 学習装置と深層領域

 •おわりに



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【第1章 エルフライドの特性と共通認識】

 「エルフライド」とは、現在、世界各国の軍隊に壊滅的な打撃を与えている宇宙の侵略勢力が運用する兵器の通称である。その兵装の多様性は確認されておらず、兵器としての個性には乏しいものの、最先端の軍事技術を誇るバイレン統国をはじめとする近代国家群が全く太刀打ちできなかった事実から、その脅威度は計り知れない。


 この兵器の最大の特徴は、以下の点に見られる卓越した汎用性にある。

 1.堅牢な設計: 約3メートルの人型であり、器用に操作可能な五指を備える。この形態は、設計した宇宙文明が我々人類と同型の生命体であることを示唆している。

 2.極めてスムーズな飛行能力: 推定最大速度は時速500キロメートルを超え、まるで水中を遊泳するかのように空中を自在に高速移動する。

 3.強力な電磁波放射: 飛行中は半径1キロメートル圏内に強力な電磁波を放出し、地球側の電子機器に壊滅的な干渉を与える。これにより、ミサイル誘導システムや無線通信など、近代兵器の運用が著しく阻害される。

 4.驚異的な航続距離: FRC軍の報告によれば、稼働時間が3,000時間を超えるエルフライド個体も確認されており、その継戦能力は測り知れない。

 5.卓越した機動性能: 戦闘ヘリコプターを凌駕する速度と、戦闘機よりも優れた小回りの利く機動性を兼ね備える。

 これら性能は、人類が考案した兵器としてはあまりにも超越しており、まさに「神か悪魔、はたまた宇宙人が生み出した」と形容するにふさわしい。その圧倒的な性能を適切に運用できれば、いかなる困難な任務も容易に達成しうる潜在能力を秘めている。

 しかし、人類とエルフライドの相性は現時点では壊滅的である。人類が主力とする兵器システムは電磁波の影響を受ける電子機器に大きく依存しており、エルフライドが飛行状態で出現すれば、人類の対抗手段はライフルや火砲といった、人力による照準を要する極めて限定的な火力に制約される。

挿絵(By みてみん)

 さらに、エルフライドはその堅牢性から、火砲の砲弾による被弾すら容易には損傷せず、これにより効果的な対抗策はほぼ皆無となる。

 この状況を打破するため、人類は鹵獲したエルフライドを基に、「子供をパイロットとしたエルフライド部隊」を創設した。黒亜皇国はもちろん、各国が密かにエルフライドを鹵獲し、その運用法を試行錯誤している段階にあると推測される。この中で、我々はエルフライド部隊の実用化と適切な運用法を早急に確立する必要があり、これが黒亜皇国の存亡に関わる喫緊の課題であると言えるだろう。

 しかしながら、宇宙技術の結晶たるエルフライドもまた、完全無欠ではない。その極めて高い堅牢性とは対照的に、高すぎる集音性能や視野能力が仇となり、突発的な閃光や大音量によってパイロットがショック状態に陥る可能性が指摘されている。加えて、エルフライドから引き出せる能力はパイロットによって差異があり、初搭乗時における「深層領域」(第6章参照)の階層に依存する部分も存在する。

 これらの特性を踏まえた上で、適切な運用を行うことが、エルフライド戦における核心部分となることは間違いない。

 ________________________________________

【第2章 基本戦術】

  第1節 対「宇宙勢力」エルフライド戦

 宇宙勢力のエルフライドは、熱線兵器と思われるライフルを用いて攻撃を行うことが各国機関から報告されている。この熱線兵器は朱色の光線を直線的なビームとして放射し、あらゆる装甲を貫通・融解または爆発させる。エルフライド自身の装甲も例外ではなく、この熱線により機体とパイロットに壊滅的なダメージが与えられる。有効射程は500メートルを超えるとされ、その有用性と威力は計り知れない。

 これに対し、人類側は現在のテクノロジー水準と敵の侵攻速度を鑑みると、火薬類を用いた爆発物を使用する中近距離兵器しか用意できない。したがって、人類側エルフライドは、回避行動を伴う機動戦と中近距離での接近戦を意識した戦術が必須となる。宇宙勢力のエルフライドよりも優れた機動操作と瞬間的な判断力を早急に育成し、実戦に適用させなければならない。


  第2節 対「国家戦力」エルフライド戦

「対国家戦力」エルフライド戦とは、人類が搭乗したエルフライド同士の戦闘を指す。国家に限らず、思想やイデオロギーが対立する勢力が互いにエルフライドを保有した場合、エルフライドを介した武力衝突は不可避である。

 この衝突においては、互いの戦術、兵器、練度といった多岐にわたる要素が複雑に絡み合う。宇宙勢力との戦闘に比べて攻撃方法や戦術の予測がしやすい反面、限定的に見れば宇宙勢力との戦闘よりも高度な技術や戦略を用いた戦闘となる可能性が高い。宇宙勢力の搭乗するエルフライドが光線銃による火力で圧倒する直線的な行動を取るのに対し、人類が搭乗するエルフライドは、より多様な手段を用いることが想定される。これらの要素を考慮すると、人類同士のエルフライド戦は、様々な側面が勝敗を決定する可能性が高い。


  第3節 各国家の想定されるエルフライド戦術

 地上戦力におけるエルフライドへの対抗手段としては、閃光弾を用いた航空機用の高射砲、または大砲が最も有効である。弾薬を改良し、弾頭の拡散効果や音響効果を付与することで、エルフライドに対する十分な効果を期待できる。

 しかし、現在人類側でこれらの兵器の配備が進まないのは、それらが現代においては時代遅れの兵器とされ、配備体制が過去に終了しているためである。戦闘機が超高速化され、全ての対空兵器が電子制御化された現代において、電子化されていない旧式の対空火器は既に退役しているのが実情だ。唯一、迅速に対応したアイナフ連邦が閃光弾を用いた特殊な対空火器を一時的に使用したが、他国の妨害を受け、宇宙勢力の侵攻を許してしまった経緯がある。

 今後は、他国の妨害行動なども加味しつつ、時代遅れとなった兵器の再評価と、その運用方法を適切に検討する必要がある。

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【第3章 エルフライド戦における通信戦略】

  第1節 通信機能と戦闘への影響

 エルフライドは、その高い機動性能や汎用性からは想像もつかないほど原始的な機能を有している。レーダーではなく目視による索敵機能がその一例だが、通信機能においても同様の制約がある。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

 エルフライド同士であれば5キロメートル圏内での会話は可能だが、

挿絵(By みてみん)

 その通信は全て傍受され、一般的な無線のようにチャンネルを暗号化することはできない。これは、エルフライドが宇宙勢力という単一の存在が運用する兵器であることに起因する。

 しかし、今後の世界情勢において、他国、特に緊張関係にある勢力との間で人類が搭乗したエルフライド同士の戦闘が予想される中、会話が筒抜けであることは戦略的に極めて致命的である。

 したがって、エルフライド戦においては、味方同士の会話で暗号が用いられるのは必然であり、中には敵を罠にはめるための欺瞞的な会話が行われる可能性もある。一度敵勢力との戦闘に突入すれば、これらの要素を考慮した上で戦闘を行う必要があり、エルフライドのパイロットは、このような状況に対応できるよう、想定訓練を繰り返し実施することが望ましい。


  第2節 地上部隊との連携

 エルフライドと地上部隊との主な通信方法は、手信号や旗信号、電子製品に依存しない蛍光マーカーの使用などが考えられる。これら原始的な手段を用いれば、地上から上空へ、また上空から地上へと信号を送り、最低限のコミュニケーションを取ることは可能だ。

 しかし、これはエルフライドの目視範囲内に限定されたコミュニケーションであり、その原始性は否めない。今後の人類側通信技術の発展によっては、エルフライドに直接指示を出せるような、より高度な通信手段が確立される可能性も高い。

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【第4章 エルフライド戦における認知戦・情報統制】

 認知戦とは、現在も世界各地で情報機関や政治団体によって行われている、情報工作活動全体を指す。エルフライド戦においても、その重要性は極めて高い。主な内容は以下の3点である。

 1.宇宙勢力関連の偽情報の流布: 軍を失った国家やその情報機関は、自国の国際社会における優位性確保や潜在的な恐怖感から、未だ軍を保有する国家を過度に警戒・敵視する傾向にある。そのため、これらの情報機関は「宇宙勢力関連の偽情報の流布」に躍起になっている。代表的な例としては、「宇宙勢力は存在しない」「エルフライドはナスタディア合衆国が開発した新兵器であり、我々はそのパフォーマンスに踊らされてはならない」といったものがある。熱心な反戦活動家や陰謀論者はこれを真に受ける者もいるが、大部分は懐疑的に捉えているのが現状である。

 2.敵対国家に対する陰謀論の展開: 特定の国家を悪者に仕立て上げ、その軍事行動やエルフライド運用を不当化するための陰謀論が展開される。これにより、国際世論を味方につけ、相手国の行動を制限しようとする狙いがある。

 3.反戦世論の拡大と軍への妨害支援: エルフライド戦を契機とした軍事活動全般に対する反戦世論を拡大させ、自国の軍事行動や他国の軍事介入を妨害する情報工作が行われる。これは、兵士の士気低下や、軍事行動への国民の支持を削ぐことを目的とする。

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【第5章 次世代エルフライド戦の展望】

 エルフライド戦が世界各地で展開され、その研究が進むにつれて、エルフライド一強時代は終焉を迎えるだろう。なぜなら、エルフライドを最強たらしめる最大の特性である「電磁波を放出してテクノロジーを無効化する」能力は、現状の科学でも充分対応可能だからである。

 ナスタディア合衆国関係者の話では、対電磁波仕様の製品開発が民間レベルでも加速化され、あらゆる分野において電磁波の影響をカバーする技術が開発されつつある。しかし、現状ではその普及が追いついていない。これは、世界が国家間に分かれ、現在もなお対立しているという根深い原因があるが、最も大きな要因は対電磁波製品の普及率の低さにある。ナスタディア合衆国の軍隊は次々と開発・量産化に成功しているものの、一般レベルでの普及率は1パーセントにも満たない。

 つまり、一度エルフライドが一つの町の上空を飛行するだけで、甚大な被害を巻き起こすことが可能であるということだ。国家の軍事は、民間の繁栄と物流に直結しているため、これを切り離すことはできない。短期的な戦略的勝利を得たとしても、母国が壊滅的な打撃を受ければ、それは実質的な敗北に等しい。

 これらの要素を踏まえ、今後は人類が搭乗するエルフライドに対しても大いに警戒しなければならない。各国が誤った運用をし、エルフライドを用いて互いの文明を崩壊させるような戦争を行えば、破滅的な結末をもたらすことは想像に難くない。エルフライドを保有すれば、いかなる部隊であっても作戦行動における戦術の汎用性は飛躍的に向上し、万能感が生まれる可能性がある。

 エルフライドに関わる全ての者、すなわち指導者による理性、そしてパイロットの理性の醸成が、喫緊の課題であり、強く望まれる。

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【第6章 学習装置と深層領域】

 学習装置とは、エルフライドに搭乗した際、操縦に関する情報を搭乗者の脳内に自動的にインストールする機能のことである。

 深層領域とは、学習装置によってエルフライドの操縦に関する情報が搭乗者にインストールされる際に求められる許容量を審査するための精神領域での体感を指すと言われている。

 分かりやすく言えば、第6階層に到達したパイロットよりも、第11階層へと到達したパイロットの方が、より多くのエルフライドの機能を引き出せるということである。階層によって引き出せる機能には違いがあり、より多くの「隠れ機能」を保持するパイロットの方が、戦術的にも心理的にも有利となる。

 深層領域の感じ方はパイロットごとに差異があり、「エレベーターのようだった」と答える者や、「階段だ」と表現する者もいる。一説には、パイロットにとって馴染み深い記憶や身体感覚が影響し、それが深層領域として表れていると言われている。唯一搭乗者の意見で共通しているのは、「上る」ではなく「下る」という行為を深層領域内で体感することである。

 深層領域を下れば下るほど、身体への負荷がかかり、茫然自失状態を引き起こす可能性があるとされており、その脳への影響は計り知れない。あるパイロットは、深層領域を体感した者は体内に「キー」と呼ばれる赤い結晶が現れると証言したが、ナスタディア合衆国を含む世界各国では未だその存在は確認されていない。


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