01-03:ガニ股
「……先生! ちょっといいですかっ!?」
昼休み。
トイレ後、購買を無視し、一路職員室へ。
入室からの、一直線に利賀先生の席へ。
グリコのトマトプリッツをタバコのように咥えた先生が、気だるそうになにかのプリントから顔をこちらへ──。
「……どうした、灯。変な立ちかたして」
「と、特に意味はありませんっ! それより、蔭山さんのことなんですけどっ」
「蔭山がどうした?」
「蔭山さんの前髪、ちょっと長すぎると思うんですけど……。あれって校則に違反してないんですか?」
「ぼりぼりぼり……」
返事の代わりにプリッツを数センチかじる先生。
眉間に縦皴作って、いかにも面倒そうな様子。
けれど高校生としてのプライドを少し失ったいまのあたしは、使えるものは教師だって使う──。
「ぼりぼり……していない。うちの校則はヘアースタイル自由。虹色に輝くゲーミングドリルツインテでもお咎めなし」
「でもあの前髪、前が見えなくて危ないんじゃあ……」
「しっかりノート取ってるから大丈夫だろ。おまえと違って」
「ぐぬぬ」
藪蛇だった。
この世に生を受けて15年、初めて「ぐぬぬ」って言った。
「ぼりぼりぼり……。校則なら学生証のQRコードで全文確認できるから、もう聞きにくるな」
「そうなんですか?」
「そうなんです。試しにここで確認してみろ」
「……えっ?」
「学生証は帰宅まで随時携帯。持っていないとは言わないだろうな?」
「……………………」
……藪蛇、2匹目。
内申書、悪化。