第99話 テスト返却!
私は国語のテストの採点をして、その結果に驚いていた。
今まで散々な点数だった3組が、平均点近くの点数に上がっている。
思い返してみれば、最近の教え子たちは私の話を良く聞いてくれていた。
国語は感覚の教科だと言われることもあるけれど、そんなことはない。
古文は英語と同じように勉強すればするだけ上達するし、現代文もちゃんとした解き方がある。
問題がそこにある以上、解けるようになっていなければおかしいのだ。
私はいつも生徒たちにこう言っている。
「現代文は、文章の中に答えがある。」
そう。現代文は必ず設問の文章の中に答えが書いてあるのだ。
社会における一般常識や、自分がその文章を読んでどう思ったかを聞いているわけではない。
「人を殺してはいけない。」というのは正しいことだけれど、文章中に「人を殺しても良い。」と書いてあればそちらの方が正解になるのだ。
「じゃあ、今からテストを返却します。秋田君、浅野さん、飯森さん...」、私は生徒1人1人に採点したテストを手渡していく。
全員にそれを配り終わると、私は生徒たちに尋ねた。
「さて、みんな。今回の国語のテストの点数は何点だったでしょう?」
「50点!」
「43点!」
「30点!」
「82点!」
「49点!」
生徒たちが次々と予想を口にする。
そう。これこそ私のクラスの良さだ。
どんな時でも元気いっぱい、話を聞いていれば明るく返事をしてくれる。
話を聞いていればだけど...
でも、それはこのクラスの良さだと本当に心の底から思っている。
「減点!」
「欠点!」
「弱点!」
山田連や吉田健太郎、植松博なども茶々を入れるのを忘れない。
「67点!」、桐谷蒼が叫んだ。
「惜しい! 今回のテストの平均点は...」、そう言って私はチョークを手に取った。
69という数字を黒板に書く。
「お!」
「すげぇ!!」
「やるな3組!」
「頑張ったじゃん、私たち!」
ざわつく教え子たち。
「でも、学年の平均点を下げてるのもうちのクラスだと思うけどね。」、山田春奈がそう言うとクラスメートたちが一斉に笑った。
「でもよー、他の教科でもほとんど平均点だったんだぜ。俺たちも成長したもんだ。」と山川裕也。
「そうね。でも、3組のみんなならもっと成長できると思うわ。今回のテストもしっかり復習するよ。まずは大問1の漢字から...」
私は授業を終えると、職員室に入った。
「いやぁ園崎先生、素晴らしいですね。3組の生徒たちはどの教科でも点数を着実に上げていますよ。」、鈴木林太郎に何気なく声をかけられた。
「ありがとうございます。でも、鈴木先生の教え子さんたちに比べたらまだまだですよ。」
私は謙遜しながらも、心の中では凄く嬉しい気持ちになった。