第95話 秘密のサプライズ
「皆さん、こんにちは。
そして、二日間にわたる文化祭、本当にお疲れ様でした。
今年の文化祭のテーマは「未来へつなぐ、一人ひとりの光」でした。
そのテーマのもと、各クラス・各部活動が創意工夫を凝らし、準備に全力を尽くしてきたと思います。
本番では、笑顔や歓声、驚きや感動に満ちた素晴らしい時間が流れていました。
教室や体育館、廊下の隅々にまで、みなさんの情熱と努力があふれていたことを、心から誇りに思います。
また、この文化祭の開催にあたり、ご指導いただいた先生方、ご協力いただいた保護者の皆様にも深く感謝申し上げます。
そして何より、会場を盛り上げ、文化祭を一緒につくり上げてくれた生徒一人ひとりに、感謝の拍手を送りたいと思います。
文化祭は今日で終わりますが、この経験はきっと、これからの学校生活や人生の中でも力となるはずです。
成功も失敗も、すべてが私たちの成長の糧です。
それでは、これをもちまして、第23回森浜祭を閉会いたします。
ありがとうございました。」
生徒会長が挨拶をすると、盛大な拍手が起こる。
やはり生徒会長の田辺蒼真は、いかにも優等生といった雰囲気だ。
普通の挨拶をしているのに、みんな彼の話を真剣に聞いていた。
最もお約束通りその前の校長先生のお話はとんでもなく退屈で、聞いている生徒の方が少なかったが。
文化祭の振り替え休日が終わると、いつも通りの授業が始まる。
「文化祭、楽しかったね。毎日でもやりたいくらい。」
「授業、めんどくせーな。」
「ほんとにだるいわよね。」
生徒たちは口々に愚痴を言いながら登校する。
2時間目の国語の授業の時間、牛島佐紀が真剣にノートを取っていると、後ろから肩を叩かれた。
「何よ、秋田県!」
「その呼び名はやめろって。水野さんが、牛島さんにこれ渡して欲しいって。」
「真理が?」
佐紀は、健からそれを受け取ってすぐ理解した。
1枚の色紙に、中村裕太へのメッセージが書かれている。
「何を書けば良いんだろ。」
佐紀は長い間考えて、やっとのことメッセージを書き記した。
そして、前の席の飯森杏樹に色紙を回す。
彼女も、その趣旨をすぐに理解した様子だった。
「ねぇ、みんな、今日何かあったの? 大丈夫?」
私が心配そうに声をかけると、教え子たちが一斉に何かを誤魔化した。
「そ、そんなことないですよ。いつものことです。」と佐紀。
「はい。園崎先生は気にしすぎです。」と健。
「みんな文化祭が終わって疲れちゃってるんですよ。」、真理がそう言うとみんなが一斉に頷く。
「そうそう。」
「まだ文化祭気分で。そろそろ切り替えないといけませんよね。」
「先生はいつも通り授業を進めてください。」
「そ、そう? じゃあ続けるわね。」、私はその日生徒の普段と違う様子を気にかけながらも、いつも通り授業を続けたのだった。