第94話 神刻のレクイエム ~漆黒の運命を超えて~
さて、音楽祭が終わった後は、各クラス独自の発表に移る。
3組が行うのは、オリジナルの演劇。
タイトルは「神刻のレクイエム ~漆黒の運命を超えて~」、脚本及び主役はよっしーこと、吉田健太郎。ヒロインは早乙女梨華。
平凡な生活を送っていた中学2年生、黒嵐 夜叉丸の右目にある日突然「黒き紋章」が浮かび上がる。
彼はそれを「封印されし混沌の右眼」と名付けた。
普段の中二病全開の彼のキャラを知っている生徒からは応援の声が飛んだ。
そして、いよいよヒロインの月影ルナを演じる早乙女梨華の登場。
「あなたの力が、世界を滅ぼす…」
大人しい美少女である彼女の力強い言葉に会場が湧く。
学校の裏山に突如現れる謎の遺跡の演出と共に叫ぶ健太郎。
「俺の中の…誰かが目覚めようとしているッ!」
突如、「堕天騎士団」からの刺客たちが学園に次々と襲来し、戦いが始まる。
健太郎が次々と敵をなぎ倒す姿は驚くほど様になっていた。
そして、いよいよクライマックス。
明かされるルナの正体。覚悟を決める夜叉丸。
「夜叉丸…ありがとう。私、あなたに出会えて幸せだった…」
梨華がこのセリフを言った時、会場の多くの人が涙した。
中二病でやんちゃ、そしてムードメーカー的存在の吉田健太郎と、クラスの中ではあまり目立たない方だけど、容姿端麗な早乙女梨華、この配役の組み合わせは独自の個性とハーモニーを生み出した。
これが健太郎と梨華が付き合っているという噂が立つきっかけにもなったのだった。
そして、午後は自由活動。
様々なクラスの催し物に参加することができる。
私も色々なところを回った。
3年1組のお化け屋敷に、2年4組のコスプレ大会、1年4組の脱出ゲームなど...
どのクラスもとても素晴らしい出し物をしていた。
因みに、私たちのクラスは模擬店をしている。
文化祭を楽しみながらも、私は生徒たちの様子を伺うことも忘れない。
牛島佐紀と水野真理が仲を深めている様子を見て、微笑ましい気持ちになった。
また、音楽祭が成功したことによって、井上美月も佐紀たちと元通りの仲に戻れたようだ。
合唱祭が終わった後の放課後の帰り道、佐紀は美月に抱き着いて彼女を讃えた。
むろん私にそのことを知る由はなかったけれど。
けど、文化祭は素晴らしい物だ。
純粋に楽しいことはもちろんだし、普段不仲な生徒たちが1つの物を作り上げるために協力するきっかけにもなるから。
閉会式が近づくととても寂しい気持ちになった。
「楽しかったな。けどもう終わっちゃうのか、文化祭...」