第9話 授業妨害四天皇
次の面談者は、斎藤るな。
改めて見つめてみても、彼女は類まれな美少女だと思う。
整ったスタイルに合わせ、長い睫、高い鼻、クラスの中でひときわ存在感を醸し出す存在。
田辺日和のいじめに関する彼女の証言は、概ね小山ありさと一致している。
しかし、両者の心情には大きな乖離があった。
ありさはるななことが好きなのに対し、るなの方はありさのことを嫌っている。
理由は気持ちが一方通行で、あざといからだそうだ。
また、普段の気怠そうな表情も気に入らないらしい。
「今言ったように私はあの子のことは嫌いです。でも、あの子は私の言うことなら何でも聞いてくれるから利用しようと思ったんです。」
美しい容姿とは対照的になかなか腹黒い性格の持ち主のようだ。
「るなさんは確か、沙織さんとも仲良くしていたわよね。」
「はい、私の味方は彼女だけです。ああ見えて友達思いの優しい子ですから。あの子以外は友達と思ってない。真美と侑李は敵だし、日和さんは腹が立つガキの相手をしているみたいで嫌いです。」
「るなさんは、今の学校生活に満足してる?」
「そんなわけないじゃないですか。授業は荒れてるし、碌な人間がいないし...」
その後1時間ほど話をして、凛は眩暈を覚えた。
1つの女子のグループだけでも簡単には解決できそうにない。その上、このクラスには他の問題まで介在している。
授業妨害四天王と呼ばれる、悪く言えば問題児の存在だ。
山田連、植松博、相川春樹、吉田健太郎の4人。彼女は沙織たちのグループのように複雑な人間関係を抱えているわけではないが、教員の授業を妨害する常連だ。しかも、それぞれ手口が異なる。
連は教員が何かを離す度に茶々を入れる。多少騒々しくはあるが、話が授業の内容と関係しているため幾分マシだ。
問題なのは他の3人。
植松博は授業妨害をする際に謎のリーダーシップを発揮し、クラスをまとめるのが上手い。
授業中に全員でゲームをし始めたり、40人分のボールペンのノック音で教師を困らせたりといった具合だ。授業時間にクラス全員で外に抜け出したこともある。そのリーダーシップを別のところに発揮してくれと言いたくなる。
そして相川春樹、こちらは典型的な授業妨害が得意で、常に教師に対して反抗的な態度を取る。
最後に吉田健太郎。彼は中二病の真っただ中であり、授業中も常に格好つけながら教師に口答えする。
同じ授業妨害でここまで差があるのは面白いが、やはりこのクラスを3年間まとめていくのはとても大変そうだ...