第86話 前夜祭の幕開け
いよいよ、文化祭前日。
今日、学校では前夜祭が行われる。
本校始まって以来の伝統、通称森浜祭の打ち上げだ。
「それでは、まず、生徒会長挨拶。田辺蒼真生徒会長よろしくお願いします。」
生徒会長が壇上に立つと歓声が沸き起こる。
スタイル抜群で、容姿端麗。まさに、モテる男を体現したような存在だ。
「こんばんは。皆様、楽しんでますかー?」
「ウォー!!!」
生徒会長の呼びかけに元気よく答える学校中の生徒たち。
「前夜祭へようこそお越しくださいました。
まず、ここまで準備を頑張ってきた各クラス・部活動・有志の皆さん、本当にお疲れさまです。そして、支えてくださった先生方や保護者の皆さまにも、心から感謝申し上げます。
今年の文化祭のテーマは「未来へつなぐ、一人ひとりの光」です。
このテーマには、私たち一人ひとりが自分の個性や力を思いっきり表現して、全力で楽しもう!という思いが込められています。
前夜祭は、その文化祭のスタートを飾る大切な時間です。明日をもっと最高の一日にするためにも、今夜は思いっきり盛り上がりましょう!
仲間と笑い合いながら、照れながらでも一歩を踏み出す——そんな瞬間が、きっと一生の思い出になるはずです。
それでは、文化祭前夜祭、スタートです!!」
会場は拍手の嵐に包まれた。
金子沙織が田辺日和を指でつつく。
「ねぇねぇ、田辺ってさ?」
「うん、私のお兄ちゃんだよ。」
沙織の問いかけに即答する日和。
「やっぱり。日和とは全然違うね。」
「何よ。私が根暗だとでも言いたいわけ?」
「いや、そんなんじゃないけど、兄妹でも全然性格違うんだなって。」
そう、生徒会長の田辺蒼真は日和の実の兄であった。
学業優秀、運動神経抜群の彼に彼女は憧れを持っていた。
「続いて、校長先生の挨拶です。松山先生、お願いします。」
既に学校の事実上の決定権は2組担当の丸山望が握っていたが、形式上であれ校長は松山由里だった。
「皆さん、こんばんは。
校長の松山です。
本日は、文化祭の前夜祭にこれだけたくさんの生徒の皆さん、先生方、そして関係者の皆さまが集まってくださり、大変うれしく思います。
文化祭は、日々の学習や活動の成果を発表し、互いに認め合い、楽しむ大切な行事です。そしてこの前夜祭は、文化祭の幕開けを飾る特別な時間です。
準備に関わってきた皆さん、それぞれのクラスや部活動、有志の発表など、どれも力が込められていて、とても楽しみにしています。
今夜は、仲間の頑張りを応援し、自分たちの力を信じ、思いきり楽しんでください。
そして、明日の本番では、一人ひとりが主役です。自分らしく輝ける文化祭になることを、心から願っています。
それでは前夜祭、スタートです。
楽しいひとときをお過ごしください。」
松山校長が話し終えると再び会場から拍手が沸き起こる。
最も、この退屈な話を真剣に聞いていた生徒は少なかったが。
そして、文化祭のロゴやシンボルがライトアップされる。
いよいよ、前夜祭のメインイベントの始まりだ!