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中学教師園崎凛  作者: finalphase
第2章 中学1年生2学期編
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第82話 転校の予定

 私が朝、いつものように職員室で仕事をしていると、珍しい生徒が相談に来た。


私は少しばかり驚いた。


目の前にいる中村裕太という生徒が自発的に相談に来ることはあまり想定していなかったから。


「先生、相談があるんです。」、そう言って私の瞳を真っすぐに見つめている彼に、私は礼儀正しいという印象を受けた。


そもそも、教師に対して敬語を使える生徒は3組には多くなかった。


その代わり、彼らはとても元気である。


中村裕太は礼儀正しいという長所がある一方、明るさに欠けるところがあった。


暗いことが悪いことだとは思わない。明るい生徒の方が話しやすいという教員は多いだろうが、生徒の性格によって態度を変えてはならないと私は思う。


けれど、中村裕太の有している暗さは、自信の無さに起因する。


私は、彼にもっと自信を持ってほしいと密かに思っていた。


「園崎先生、僕は来月両親の仕事の都合で転校します。そのことをクラスのみんなに自分の言葉で伝えたいんです。明日の朝の会で時間を取って頂けませんか。」


私は彼の頼みを了承した。


前と比べて大きく成長したと思う半面、不安な気持ちも頭の中によぎった。


中村裕太という人間は、人前で話すのはあまり得意な方ではないだろう。


もし想定外のハプニングが起きれば最悪の場合、彼の心の中に一生の傷となるトラウマを残すことも考えられた。


そして、迎えた翌日。


私は「裕太君から伝えたいことがあるから、みんなに聞いて欲しい。」とお願いした。


彼は教壇の前に立つと、思いのほか堂々と喋った。


「突然ですが、僕は両親の仕事の都合により、来月転校します。学校に来れない期間も長かったけれど、学校に復帰した時みんなが優しくしてくれて嬉しかったです。今までありがとうございました。」


そう言って頭を下げた。


「でもさ、まだあんた歌と合奏、下手だよね?」、佐紀がストレートな突っ込みを入れる。


そして、「音楽祭、絶対優勝するからね。」と続けた。


裕太が彼女の言葉に頷くと、クラス中から拍手が沸き起こった。


「私、思ったんだ。上手い人だけで合唱や演奏をして優勝するんじゃ、面白みがないし、何よりそれは3組の発表じゃない。下手な人も含めて正々堂々とやって、優勝を勝ち取るのよ。1年3組というクラスの合唱で。」


最近の佐紀の言動は確実にクラスの士気を高めている。


「佐紀、じゃあ、私も、一生に歌って良いってこと?」、美月が恐る恐る尋ねる。


「当然でしょ。」、佐紀が微笑んでウィンクをした。


「うわぁ、佐紀ってウィンクとかするんだ。」と裕也。


「前はクラスのボスって感じだったのに、今じゃリーダーだね。」と侑李。


「余計なお世話よ」、そう言った彼女に対して教室内でどっと笑いが起こった。


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