第79話 「放課後の黒板ヒーロー」
脚本家、役者、土地家屋調査士、ひよこ鑑定士...私は自宅のパソコンで様々な職業について調べていた。
世の中には様々な種類の職種がある。
若者の進路は複数の道に枝分かれしていて、可能性を秘めている。
教員という職種に就く人間は、安定志向が強い傾向にはあるとは思うが、リスクが高い道に進むのもありだと私は思う。
たった一度きりの人生なら、やりたいことは全力でやっておいた方が良い。
私が教員でありながらも、様々な職種について調べるのは、視野を広げるために他ならない。
教員は素晴らしい職業だと思うけれど、学校という狭い村社会の中にいると、外の世界が見えづらくなってしまう。
だから、私は固定観念にとらわれないことを常に心がけている。
起業家、投資家、YouTuber...この辺りを目標にするという選択肢もありなのだ。
それに、人生は何が起こるか分からない。
思いもよらない方向から、やりたいことが見つかるかもしれないのだ。
私だってそう。
私が教員という職業に興味を持ったきっかけは「放課後の黒板ヒーロー」というアニメの存在。
丁度中学1年生くらいの時に、リアタイしていたアニメ番組だ。
主人公の新米中学校教員・青井 遼は、かつて「教師なんて絶対やらない」と思っていた元・不良高校生である。だが、ある恩師との出会いをきっかけに、教職の道を選んだ彼は、都内の公立中学校「清風中学」に赴任することとなる。
待ち受けていたのは、成績格差、不登校、SNSいじめ、家庭問題など、さまざまな事情を抱えた生徒たち。そして、理想と現実のギャップに悩む教員仲間や、時代についていけない年配教師たち。教室はまるで、日々変化する"戦場"のようだった。
しかし、遼はあきらめなかった。「誰一人、見捨てない」──生徒たちと真正面から向き合い、ときにぶつかり、ときに涙を流しながらも、少しずつ信頼と絆を築いていく。
そして、最終的には全員が笑顔でいるクラスを作り上げたのだった。
もちろん、青井 遼は架空の存在ではあるけれど、ある種の理想の存在として私の胸の中に生きていた。
恩師の八神先生にも負けず劣らず、常に私の憧れだった存在。
彼が心の中で頻繁に呟いていたセリフ、「誰一人、見捨てない」、この信条は今も私の胸の中に強く根付いている。
普段アニメを見ることは少ない私だけれど、このアニメは何十回と見返した。
DVDも全巻揃えており、自宅に大切に保管している。
そして、それを見る度に思う。
「教員は、常に学び続ける必要がある」、と。
現状維持じゃ駄目なんだ。
昨日より今日、今日より明日、未来の私はきっと、過去の私よりずっと強い。