第77話 よっしーの脚本
文化祭では合唱と合奏の他に、各クラスで独自の出し物をすることができる。
1年3組では、オリジナルの演劇を行うことが話し合いで決定した。
脚本は吉田健太郎、通称よっしー。
彼は国語はあまり得意ではないものの、想像力は豊かだった。彼の中二病全開のキャラと独自の感性が相まって、シナリオはかなり良い味を出していた。
タイトルは、「神刻のレクイエム ~漆黒の運命を超えて~」
彼が書き上げた台本は以下のとおりである。
●登場人物
主人公(1名):
黒嵐 夜叉丸…中学2年生。自称「封印されし混沌の右眼」を持つ。
ヒロイン(1名):
月影 ルナ(つきかげ るな)…転校生。どこか悲しげな過去を背負っている。
仲間(8名):
夜叉丸のクラスメイトで、次第に「戦い」に巻き込まれていく。
(役名例:風牙レン、氷堂シキ、雷電ハルカ、鏡蓮ジン など)
敵(10名):
「堕天騎士団」と呼ばれる異界からの使者。
それぞれ独自の中二設定と必殺技を持つ。
教師/大人たち(3名):
実は過去に戦った「元・選ばれし者」。やたら意味深な発言しかしない。
モブ生徒・町の人々など(17名):
背景やギャグ要員も含め、最大40人まで配役可能。
※一部二役OK、全体的に「ノリ命」
●シナリオ
第一幕:闇の目覚め
平凡な中学生活を送る夜叉丸。しかし、ある日突然、右目に「黒き紋章」が浮かび上がる。
同時に現れる転校生ルナ。「あなたの力が、世界を滅ぼす…」
学校の裏山に突如現れる謎の遺跡と、叫ぶ夜叉丸:「俺の中の…誰かが目覚めようとしているッ!」
第二幕:堕天騎士団の襲来
「堕天騎士団」からの刺客たちが学園に次々と襲来。戦いが始まる。
仲間たちも覚醒(なんか突然武器が出てくる)。自作の必殺技を叫びながら戦闘。
夜叉丸の右目から「黒焔竜」が暴走。
第三幕:選ばれし記憶と運命の選択
夜叉丸は夢の中で「前世の記憶」を思い出す。彼はかつて「時空の監視者」だった。
ルナの正体が明かされる。「私はお前を…倒すために生まれた存在なの…!」
仲間との絆、裏切り、そして「友情ビーム」的なクサいセリフ満載で展開。
最終幕:レクイエムは刻まれた
最終決戦。舞台上で全員が変身し、全員叫ぶ。
「力が…溢れてくるッ!!」「これが俺たちの絆だァァァ!!」
世界の命運をかけた「真の必殺技(全員でポーズ)」で敵を倒す。
最後にルナが微笑んで消える。
「夜叉丸…ありがとう。私、あなたに出会えて幸せだった…」
セリフ例(ちょっと下手な感じ)
夜叉丸:
「俺の右眼が…また疼きやがる。クソ…今夜も、"ヤツ"が目覚めちまいそうだぜ」
ルナ:
「あなたは知らない…その右眼に刻まれた封印の意味を…!」
敵幹部・紅蓮のシュバルツ:
「ククク…この俺の"終焉紅蓮斬"に耐えられるかな?」
仲間キャラ:
「やめろシュバルツ!俺たちは、仲間だろ!?(何も関係ないのに)」
●小道具/演出アイデア
片目に眼帯(100均の)
段ボール製の巨大剣
黒マント、赤いネクタイ
煙(ドライアイス風の演出)、スポットライトの使いすぎ
SE:効果音を口で「バゴーン!」「ビシャーン!」と言う演出でもOK
露骨に中二病チックの格好つけたがりな感じは垣間見えるものの、ある程度の面白さがあり、小道具や演出アイディアなだも優れていると私は思った。
最初こそ「中二病過ぎて恥ずかしい」、「痛い」という意見も出たものの、クラス全体で話し合った結果このシナリオで演劇をすることが決定した。
自分で脚本を手掛けただけのことはあり、吉田健太郎は主人公の黒嵐 夜叉丸の役にピタリとはまっていていた。
その姿を見て、私の脳裏に「脚本」、「役者」という言葉がよぎった。
そういう世界に興味を持てば、国語が苦手な彼が国語に触れるきっかけになると思ったから。