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中学教師園崎凛  作者: finalphase
第2章 中学1年生2学期編
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第72話 恩師の存在

 あれからというもの、渡辺響は毎日私のところに来るようになった。


もちろん、数学の問題を聞きに。


彼はやる気になれば熱心に取り組み、分からないことを分からないままにしない生徒であることが分かった。


「まずは正負の数からなんだけど、なぜ実態のないはずのマイナスという概念が存在するんですか?マイナス一個のリンゴなんて言わないのに。」


「数学の世界では実体のないものに数を割り当てることで、数量の増減や方向を表しているんだよ。」


「3ー(ー3)はなんで6になるんですか。数直線上でマイナスは左なのに。」


「負の数を引くと、数直線上で左じゃなくて、右に移動することになるんだよ。だから、3からー3を引くことは、3に3を加えることと同じになる。そうすると3+3は6になるでしょ。」


「移行って何?何のためにするの?」


「移行ってのはね、方程式を変形する際に、項をイコールの両辺で移動させる操作のことだよ。そうすることで方程式が解きやすくなるの。」


今、数学の授業では丁度方程式の文章題を学習しているという。


私は、彼の質問に答えながら懐かしさを感じていた。


私も、最初は中学数学全く分からなかったっけ。


いや、それどころか、英語、理科、社会、国語...


勉強全般が苦手だった。


勉強もできず、運動も苦手、音楽もさっぱり。


まさに、落ちこぼれだった。


しかも、今とは違って性格も暗くて友だちもいなかった。


そして、勉強で分からないところを分からないということもできなかった。


「こんなことも分からないの?」と思われて見放されるのが怖かったから。


そんな私の人生を変えるきっかけを作ってくれたのが、担任の八神葵先生。


彼女は国語の教師だったけれど、数学、社会から、音楽、体育に至るまで私の練習に付き合ってくれたっけ。


八神先生は落ちこぼれの私とは違い、幼少期から優等生街道を突っ走ってきた人だけど、誰よりも人の気持ちを考えられる人だった。


生徒から相談を受ければ真剣に寄り添い、生徒が人を傷つけるような行為をすれば本気で叱ってくれた。


そして、彼女のトレードマークと言えば何といっても持ち前の明るさと笑顔。一緒にいるだけで楽しく、それでいて自分なりの信念を貫いている存在。


私の恩師、八神葵の信念、それは誰もが笑顔でいれるクラスを作ること。


私もまた彼女の背中を追ってきた。


最初は根暗な性格を押し殺して、明るく楽しいキャラを演じていた。


「八神先生みたいになるんだ。」と毎日心の中で呟いた。


いつしか私の性格は見違えるほど明るくなった。偽りの明るさではなく本物の明るさ。


けれど、八神先生はまだまだ遠い存在。


少しでも彼女に近づけるように、これからも日々精進しなきゃ!



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