第66話 女の子の本気
私、小林侑李。
最近は、授業をちゃんと聞いていし、宿題も毎日出すようになった。
朝、廊下で先生に会えば笑顔で挨拶を交わす。以前の私と比べれば、見違えるほどの変化だ。
ある日の体育の授業のこと、体育館でバスケットボールをしていた。
私のグループは牛島佐紀、金子沙織、山田春奈、浅野真美、遠藤花実の5人。
入学当初の時に沙織とは色々あったし、佐紀には酷いいじめをされそうになった。
けれど、過去のことはもう忘れた。私は今を全力で生きるって決めたから。
チームの運動神経は全体的に良いけれど、山田春奈は運動が大の苦手。
彼女のミスに佐紀が憤る。
「何やってんだよ、このカスが。負けたらお前のせいだからな。」
「まぁまぁ。」、私は彼女を宥める。
「は?あんた何なのよその余裕そうな表情は?大して可愛くもない癖にツインテールなんかしちゃって...このブサイクが...ブサイク...」
私は彼女の言葉を気にも留めなかった。
弱い犬ほど良く吠える。
事実、佐紀は容姿が端麗な侑李に嫉妬を覚えていた。
「春奈、どんまい。誰でも苦手なことはあるよ。困ったら私にパスして。」
私の呼びかけに、彼女は答えてくれた。
今日の私は絶好調。何回もシュートを入れることができた。
「何か侑李丸くなったね。前はそんなに人に気を遣わなかったのに。」
親友の真美がそう言った。
「おい、見ろよ。小林侑李がまともに体育の授業頑張ってんぜ。」
「何か垢ぬけたな、彼女。」
「あんなに運動できたんだ。体育祭の時の行動で誤解してたよ。」
休憩中の男子の間で、私の変化はちょっとした話題になっていたようだ。
体育館の向こう側では、男子たちがバスケをしている。休憩中の女子が声援を送る。
山川裕也の活躍は一段と際立っている。
「さっすが私の彼氏!」、心の中で呟く。
そう、私は夏休み前から彼と交際を始めた。
告白してきたのは裕也の方から。私も裕也のことは以前から気になっていたし、その後の猛烈なアピールで恋愛的に好きだという感情が芽生えた。
裕也も私と付き合いだしてから、勉強にも一段と気合が入るようになっていた。
教師に反抗することもなくなり、運動にも勉強にも真っすぐな気持ちで取り組む彼は周りに爽やかな印象を与える。
好きな人には、私のことをもっと見て欲しい。女の子として可愛いって、自分にはこの人しかいないって思わせたい。
その点私はまだまだ未熟。本当の戦いはこれから始まる。
女の子の本気を、見せてあげるんだから。