第64話 告白罰ゲーム!
田中直人、秋田健、加藤大樹、久保田和樹、佐藤雄介のグループでは罰ゲームが流行っていた。
5人でゲームをして、最下位だった人が罰ゲームをする対象になる。
今までは先生に悪絡みするとか、動物の鳴きまねをするとか、そんな程度だった。
けれど、今回は違う。ゲームに負けた秋田健は頭を抱えた。
なぜなら、今回のお題は「クラスの誰かに告白する」というものだったから。
「こんなことしたら誰かを傷つけることにならねーか?」
「罰ゲームは罰ゲームよ。やるっきゃない。」と直人。
「健は女の子には優しいんだな。」と和樹。
健は、しぶしぶ罰ゲームを実行することにした。とは言ってもクラスの中には恋愛的に好きな人はいないし、もしOKでもされたらその子を傷つけることになってしまう。
だから、彼は考え得る最善の選択を考えた。
それは、可愛くてモテそうな子に告白するというものだ。この方法なら、必然的に断られる可能性が高くなる。
3組の中で特に可愛い女子と言えば、斎藤るな、早乙女梨華、小林侑李あたりだろうか。
中でも最もモテそうなのは、性格が活発で、運動もできる斎藤るなだろう。
日本人とフィリピン人のハーフである彼女は、ひと際目立つ存在だ。
「決めた、俺、斎藤るなに告白するわ」、健が覚悟を決めたように言う。
「お、ダメもとで高嶺の花にアタックするつもりか。」
「本当は前から狙ってただろ。」
直人と雄介がからかってくる。
「そんなんじゃねぇって。」
罰ゲームであっても、やはり女の子に告白するのはとても緊張する。
健は、放課後、人気のない体育館にるなを呼び出した。
「秋田君、話って何?」
そう言って見つめてくる彼女の瞳はとても美しい。
「あの、ずっと前から好きでした。その、俺と付き合ってください。」
ありきたりな言葉が口から出た。
「ふぅん、そっか。でも、ごめんね。私、今好きな人いるから秋田君とは付き合えない。」
彼女は立ち去り際に呟いた。
「This is the 15th time na may nagtapat ng feelings sa akin this year. Sawa na ako sa mga boring na lalaki.(私、告白されたの今年に入ってから15回目よ。つまらない男にはうんざり。)」
健は心の底でほっとしていた。罰ゲームによる告白で、誰も傷つけずに済んだから。
一方、何事もなかったかのように家路を辿り始めたるなは、後ろから両手で目を隠された。
「うちは、だぁれだ?」、聞き覚えのある声が耳に入ってきた。