第57話 私、大ピンチ!
私、園崎凛。年齢27歳、職業中学教師。
浜森中学校に来て1年3組の担任を勤め始めてから約2カ月。今まで見たことがないほど荒れているクラスで、思い返せば色々なことがあったっけ。
実習生の原田幸喜の指導を任されてから2週間と3日、休み時間にとてつもなく大きな音がした。まるで高いところから人が落ちたかのような嫌な音。
教え子である山川裕也、山田連、植松博、相川春樹、吉田健太郎の5人が青ざめた顔で駆け込んでくる。
「先生、園崎先生、大変です...原田、原田先生が...」
彼らが導いてくれた方向には仰向けで倒れている原田幸喜の姿があった。
どうやら彼は校舎の4階から飛び降りたようだ。慌てて救急車を呼んで、校長に報告をした。
「園崎先生、これはあなたの監督責任ではないですか?」、松山校長は険しい表情で言った。
「申し訳ございません。」
「もし彼がこのまま帰らぬ人になったりしたらそれ相応の責任を取ってもらいますから。良いですね。」
「承知致しました。」
私がもっと優秀な教師だったら... 実習生の悩みにいち早く気づいてあげられていたら、こんなことにはならなかったのに...
そう思うと後悔の念だけが押し寄せる。
松山校長はそんな私を満足げに見つめる。
「私はね、若い人が苦しむ姿を見るのが好きなんですよ。今後もっとその顔を見せてくださいね。」
思いもよらぬ彼女の言葉に、私は返す言葉がなかった。
「無能な実習生は計画通り自殺未遂してくれた。たくさんいじめて来た甲斐があったわ。この責任をすべて園崎先生に押し付け、彼女に死んでもらえば私の計画は完璧ね。」、校長の松山由里は心の中で毒づいた。
数日後、私は再び校長室に呼び出された。原田幸喜は一命を取り留めたものの、打ち所が悪かったのか、脳に後遺症が残ったとの報告を受けた。
「彼が障碍者に成り下がったのは、すべて、あなたのせいです。園崎先生、どう責任を取られるおつもりですか?」
「申し訳ありません。」
私が僅かに震えた声を出した瞬間、校長に身体を強く蹴飛ばされた。床に倒れた私の鳩尾を校長が強く踏んづける。
「っ。辞めて...ください...」
「あなた、校長に向かって何ですかその口の利き方は。礼儀を知りなさい。」
松山校長が更に体重を乗せてくる。
「誰か...誰か助けて...」
その時、扉をノックする音がした。校長室に何者かが入ってくる。
一瞬、一縷の希望を感じた私の心は、一瞬で絶望へと変容した。
更なるピンチが、私へと迫っていた。