第53話 天使の反逆
「侑李さん、それそういう意味?」
佐紀が鋭い目で侑李を睨みつける。
「佐紀、桜、真由、まどか、光、美月、花実の7人はいつもみんなでいじめをしている。私も真美も酷い目に遭った。」
「それ、ほんとなの?」と真理。
「そんなわけないじゃない。単なる言いがかりよ。」
心の中では動揺しながらも必死に平静を保つ佐紀。
「それに...」
侑李は続ける。
「佐紀は普段からいじわるで人に害を与える性格よ。」
「あら、どの口が言ってるのかしら。体育祭での様子を見るに、私は侑李さんの方が性格に問題あると思うけど?私がいじめをしたって証拠がどこにあるわけ?」
「ここよ!」、天使が立ち上がって背中を見せる。急に服を脱ぎだしたのかと思って焦ったクラスメートたちの視線も彼女の背中に釘付けになる。
「この傷は佐紀たちにつけられたの...」
「酷い。」
「こんなことするなんて、最低...」
クラス中がざわつく。それでも牛島佐紀は冷静だった。
「こんなのは言いがかりよ。誰かに頼んで傷をつけて貰えば良いだけだもの。やったのは私じゃない。天使が何考えてるのかわからないよ、私...」
「じゃあこうしましょう」、侑李が力強く言う。
「次のテストで、5教科の点数で勝負。私と天使、佐紀とまどかの2人の平均でね。もし私たちが負けたら何でも言うこと聞いてあげる。その代わりもし私たちが勝ったら、その時からは半径1メートル以内に近づかないで。佐紀、まどかだけじゃなく桜、真由、光里、美月、花実もね。」
「面白いじゃない、望むところよ。」
佐紀が侑李を睨みつける。
「で、あんたはどうなのよ?」
天使に問いかける。彼女ははっきりと答えた。
「良いよ、その勝負、受けてあげる!」
「まぁまぁ、みんな落ち着いて。」
宥める凛に対して侑李が力強く答える。
「先生はこの件に関しては勝負が終わるまで一切口を出さないでください。」
「私からもお願いします。これは、私たちの...いえ、私の勝負ですから...」
本当はこの件に関してもっと詳細を知りたかったが、彼女たちの決意は想像以上に固いようだ。
凛は生徒たちの気持ちを尊重した。
「分かった。私は何も言わない。けど、あくまで純粋なテストの点数だけで勝負してね。テスト前に悪口を言ったりとか、相手に手を出したりしたらその時点で即失格。約束できる?」
「生徒に命令じみたことをするのは嫌いだけど、この際仕方ないわ」、と凛は思った。
「園崎先生がそこまで言うなんて珍しいね。」と侑李。
「でも、分かった。私、約束する。」
天使も首を縦に振った。
「良いわよ。」
「やってやろうじゃない。」
佐紀とまどかもそれぞれ賛成の意を口にした。