第51話 新たないじめ
盗撮事件が発覚してから、女子の間では団結力が高まった。
男子たちは犯罪者に成り下がった元教頭である松田博人のことについて根も葉もない噂を広めている。
「盗撮なんてありえない」
「ほんと最低」
「生徒のことなんだと思ってるんだか」
「もうあんなことされないように私たちの力を見せつけるのよ。」
不仲だった女子たちも、盗撮犯を共通の敵として認識したようだ。しかし、このかつてないほどの女子たちの調和は新たなる事件の前兆でしかなかった。
放課後、荻原まどかは杉田天使を呼び出した。
「話したいことってなに、まどかさん?」
「あの、その、私謝りたいの。今まで酷いことしちゃって、ごめんなさい。」
深々と頭を下げるまどかを天使は真っすぐな瞳で見つめる。
「別に良いよ。気にしてないから。」
「あのさ、天使には酷いことしちゃったからさ、自分への罰っていうか、その、誰にも言えない私の秘密を天使に知ってもらいたいんだけど、良い?」
「いや、別に良いよそんなことしなくても。」
「駄目!それじゃ私の気が済まないの。お願いだから知ってください。」
いきなり土下座をされた天使は狼狽える。
「うん。そこまで言うなら。」
「ありがとう!私のあとをついてきて。」
静かに歩き出すまどか。2人はしばらく歩くと、深い森の中に入った。
「ここに何があるの?」、天使がそう言った瞬間、背中に痛みが走った。地面に倒れる彼女を牛島佐紀が見下ろしている。手には木の棒が握られていた。
「あぁ、ごめん結構強く当たっちゃった。」
「っ。あんた、どうしてここに?」と天使。
「どうしてってあんたをいじめるためよ。」
佐紀が合図をすると彼女の取り巻きたちが一斉に現れる。
「あはははは。まんまと騙されてくれたわね。ほんとにバカねあんたって。天使とかいうキモい名前の子に私が謝りたいとかいうわけないじゃん。」
高らかな笑い声をあげるまどか。
「騙したのね?」
「騙されるあんたが悪いんですー。さあ、みんな、やるよ。」
荻原まどか、牛島佐紀、宮島桜、如月真由、横山光里、井上美月、遠藤花実の7人が倒れている天使を一斉に蹴りつける。
「あんた、ただでさえ名前がキモいのに毎回私たちの邪魔をしてきて目障りだったのよね。調子に乗りやがって。死んじゃえば良いのに」と佐紀。
「ちょっ。辞めてよ。」
「その苦痛に悶えた表情、最高だね。本番はこっからだよ、あんたたち、こいつの服を脱がせるわよ。」
「は?何言ってんの。ちょっとほんとにやめてよ...」