第45話 衝撃の告白
「裕君は昔からそうだったよね。」
山田春奈が静かに呟いた。
「え?」
「困ってる人がいれば何も考えずに助けようとしてさ」
「そうだったか?」
「そうだよ。私ね、そんな裕君のことが好きだったんだよ。」
山川裕也は思わず大声を出しそうになったが、慌てて口を抑えた。
「驚いたでしょ?」
「そりゃぁな。」
「裕君の言う通りだよ。結局私は自分が苦手なことから逃げたいだけ。」
「そんなことねーよ。家で沢山練習してたんだろ。その時点でちゃんと向き合ってんじゃん。その、悪かったな、あんなこと言って。」
「良いよ別に。けど私、もうどうすれば良いのか分かんないや。」
「大丈夫。俺で良ければ練習に付き合ってやるよ。」
裕也のこの言葉が春奈にとってはとても力強かった。
2人は小学校からの幼馴染で家も近い。
翌日から近くの公園で練習をするという約束を交わした。
時間は早朝。裕也が放課後、部活がある日が多いためだ。
「ボールはこんな感じで投げるんだ。」
「相手の肩や足を狙うと当たりやすいけど、春奈の場合はまず敵にボールを取られないようにパスすることを意識すると良いかもな。」
裕也は、春奈に手取り足取りコツを教えてくれた。
その日の休み時間のことである。牛島佐紀らはいつものように、いじめのターゲットに対して目を光らせていた。
もちろん、今回のターゲットは山田春奈。彼女がトイレに入ったタイミングを見計らって突撃した。
「何よあんたたち?」
春奈が怯えた瞳で身構える。
「何って、練習に付き合ってやんのさ。」
佐紀の手にはドッジボールの練習用のボールがしっかりと握られている。彼女はいらずらっぽく笑うと、ボールを全力で春奈に投げつけた。
ボールは春奈の鳩尾の辺りにヒットし、彼女が床に蹲る。
「つっ... あんたたち、こんなことして、どうなるか分かってんの?」
「どうにもなんねーよ。いつものことだし。今のはまだ序の口。本番はこれからだぜ。」
春奈は痛みを抑えて立ち上がって、叫んだ。
「あ、先生!」
佐紀たちが一瞬後ろを向いたのを見て、一目散に逃げだす。
「ちっ。良くも騙したな。」、ドスの利いた佐紀の声。彼女と彼女の取り巻きたちが追いかけてくる。
「何なのよ。私が何したってのよ。誰か助けて。」、春奈は心の中で叫んだ。
教室まで戻ろうと試みた彼女だが、廊下の壁の端まで追い詰められる。
「さあ、これで思う存分、この逃げ腰野郎をいじめられるわね。」
牛島佐紀、宮島桜、如月真由、荻原まどか、横山光里、井上美月、遠藤花実の7人、すなわち、いじめの常連たちが近づいてくる。
春奈は目を瞑って覚悟を決めた。