第41話 キラキラネームの功罪
小林侑李が女子トイレに入ると複数人の人影に囲まれた。
牛島佐紀、宮島桜、如月真由、荻原まどか、横山光里、井上美月、遠藤花実の姿がそこにある。
「何よあんたたち?」、侑李はあくまでも強気な姿勢を示す。
「良いねぇ、その強気な態度、嫌いじゃないよ。けど、いつまでその威勢が持つかしらね。あんたたち、この女を取り押さえなさい。」
牛島佐紀の命令で彼女の取り巻きが一斉に侑李に襲い掛かる。
侑李は1人で宮島桜、横山光里、井上美月、遠藤花実の4人を放り投げた。
しかし、如月真由と荻原まどかの2人に身体を抑えられる。
身動きが取れない侑李の前に佐紀がゆっくり近づく。
「やっぱ結構可愛いね、あんたって。小林侑李さん...」
「は?何よ急に」
「私、可愛い子をいじめるのが好きなのよね。」
佐紀が侑李の首を絞める。
侑李が顔を歪めるのを見て、嬉しそうに微笑む佐紀。
佐紀が突如手元を緩める。
解放された侑李はその場に倒れ込み咳き込む。
「あんたたち、正気、こんなことしてどうなるかわかってんの?」
「このくらいまだ序の口よ。本番はここから。」
佐紀、真由、まどかの3人が侑李にゆっくりと近づいてくる。
「ちょっ。もうやめてよ。」
その時、聞き覚えのある声がした。
「やめなよ。嫌がってんじゃん。」
声の方を見ると、杉田天使がそこに立っている。
「天使?あんたみたいな名前の奴がでしゃばるんじゃないよ。」
佐紀が、天使に殴りかかる。
しかし、なんと天使は彼女の拳を片手で受け止めた。
そして、軽々と佐紀を放り投げる。
「キラキラネームの癖に生意気よ。」
「そうよ。そのキモイ名前で偉そうにするんじゃねー。」
佐紀がやられてのを見て、真由とまどかが天使に襲い掛かる。
天使は彼女たちをも軽々と放り投げた。
そして、倒れている侑李に手を差し伸べる。
「あ、ありがと。」
侑李は彼女の手を取って起き上がる。
「なら良かった。」、天使はそう言うと爽やかに立ち去った。
「格好良い...」、天使に助けられた侑李は素直にそう思った。そして、彼女のことをもっと知りたくなった。
杉田天使...
彼女はこの名前のせいで幼少期からいじめられたり、仲間外れにされたりすることが多かった。
そんな彼女は、自ずと自分の身を守る術を身に付けてきたのである。
勉強ができなくても、運動では負けない。
名前が変わっていたとしても、身体が強ければ、いじめられることはないのだ。
天使は自分の名前が好きではないが、この名前に感謝はしている。
この名前が付いていたおかげで、強くなることができたのだから。