表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中学教師園崎凛  作者: finalphase
第1章 中学1年生1学期編
30/135

第30話 諸刃の剣

「ったく。あなたのような親がいると、格式ある本校の秩序が乱れます。今後、このような電話をしてくれば、即座に警察に訴えますよ。」


今泉宗太郎は、毅然とした態度で保護者対応を終えた。


彼は、この浜森中学校を伝統と格式ある学校だと評し、過去からの歴史を大切にしている。その秩序を乱されるのが、彼の最も嫌悪することである。


「今泉校長ったら、相変わらずなんだから...」


教頭の立花直子が小声で呟く。


彼女は、伝統と格式にはあまり拘らないたちであり、時代の変化に応じて学校を変えていきたいタイプである


保守派の今泉校長と革新派の立花教頭、彼らは犬猿の仲である。


性別だけでなく、性格、価値観、考え方など、すべてにおいて対照的である。


今は校長が平泉なので、学校政策は保守の方面に傾いていた。


立花としては早く出世して校長になり、浜森中学校を1から改革したいのが本音であった。


「今泉という校長がいる限り、この学校に未来はない。あいつなんか交通事故にでもあえば良いのに...」と立花は思った。


一方、今泉の方は、「待ってろよ、立花。少しでもボロが出たらそれを理由にこの学校を追放してやるからな。」と思っていた。


中学校の伝統を守りたいか、新しい改革を行いたいかで、教師たちの派閥は今泉派と立花派に二極化していた。


けれど、それは考え方の見の話であり、2人とも教員たちからは好かれてはいなかった。


というのも、彼らの人間性があまり褒められたものではなかったから。


校長、教頭、という立派な肩書を名乗れるようになってから、まるで一国の王になったかのように偉そうに振舞い、教員たちを労働の道具であるかのように酷使した。


時代は、間違いなく新たなリーダーを求めている。


全く、嘆かわしい限りである。自分で物事を決断できるリーダーシップ、それが彼らを校長や教頭のような管理職に導いた。


けれども、その独断で物事を決めて、決断する彼らの癖が多くの教員から反感を得る形になったのだ。


逆説的ではあるけれど、これはなべぶた式組織の宿命でもある。権力を持って自分がさぞかし偉いかのように勘違いした者はやがてその権威に溺れ、権力を暴走させたあとに自滅する。


学校は、非常に狭い村社会である。この世界の常識は、いわば世間の非常識。


大学の教育学部で教職を取得して、そのまま現場に出れば、他の広い世界を知らない可能性が高い。


これが、「教員は社会を知らない」と言われる所以である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ