第3話 2者面談
今日は教師と生徒による1対1の2者面談がある。
学校が始まって2週間経つこの時期は、困り事や不安がないかなど、生徒に学校生活に慣れたかを聞くための簡易的な面談だ。
凛は3者面談の際は、全生徒の話を平等に聞くようにしていた。
これは教師にとっては当たり前のことだが、今回に限っては事情が違う。
例のいじめに関係しているメンバーに割く時間を多くしようと心に決めた。
面談は名簿順なので、浅野真美、金子沙織、小林ゆうり、小山ありさ、斎藤るな、田辺日和の順番だ。
まずは浅野真美。
「学校生活には慣れましたか?」という凛の質問に対して、彼女は「はい。非常に元気の良いクラスだけど、根は良い人が多くて助かってます。」
笑顔で愛嬌良く話す彼女を見ていると、とてもいじめに加担するような人物には思えない。
普段の授業の様子などを聞くと、やはり殆どの授業では騒がしいらしい。
だが、1つだけ皆が静かに聞いている授業があるという。
それが社会だ。担当教員は、飯沼浩史。彼は現代的な教師像とは少し違ったタイプだ。
何でも、彼は最初の授業の時にこう言ったそうだ。
「良いか、お前ら。俺は、中学生が好きだから教師になったわけじゃない。社会という科目が大好きだから社会の教員になったんだ。だから授業中にゲームをしていようが居眠りしていようが、注意はしねー。だが、この中にもきっと社会の授業を真剣に聞きたいと思っている奴は必ずいる。そういう奴らの邪魔をしたら承知しねーぞ。」
それから彼の授業だけは、騒ぐ生徒はいなくなったそうだ。
最もその代わりにゲームか居眠りをしている生徒が大半なのだが。
浅野真美との面談は平凡に終わった。
次に、金子沙織、いじめを行ったグループの主犯格。
学校生活に慣れたかという凛の質問に対し、彼女ははきはきとした口調で答えた。
「慣れたも何も五月蠅くて気が休まらないんだけど、担任なんだったら何とかしてよ、先生。」
そう言って、凛を睨みつける。
「分かったわ。これから何とかしていく。」
背中に汗をかきながらも冷静に答える。
「その他には困ってることとかある?」
「う~ん、女子の人間関係がマジめんどい。」
「沙織さんは確か、小山さんたちと仲良くしているわよね。」
「仲良くっていうか、一緒にいるだけ。」
「まあ確かに女の子は色々あるよね。沙織さんはその関係をこれからどうしていきたいと思ってるの?」