第26話 テスト前の授業
今は丁度テスト2週間前。凛は、またもや生徒の授業態度に頭を悩ませていた。
みな、いつも以上に全く授業を聞いてくれないのだ。
「はい、じゃあ今配ったプリントの文章をで区切ってみてください。」、彼女が指示をしても誰も言うことを聞こうとしない。
「先生よ、国語ってなんの役に立つんだよ。数学とか英語が人生の役に立ちそうなのは分かるけどよ、国語を勉強する意味は分かんねーよ。」
「読解力をつけたり、人の心情を理解したりする力をつけるために、国語は結構重要なのよ。」
そう言いつつも、凛の心は動揺を覚えた。
国語の教員としては、国語と言う教科は人生の役に立つって、信じたい。
現代文だけでなく、古文や漢文のような昔の人が書いた文章も含めて。
けれど、本当にそれが人生の役に立つのかは正直分からない。
「国語と言う教科が最高に好き」、その一心だけで国語の教員になったから。
「まあ、俺は先生の授業なんて聞かなくても満点は余裕だな。漆黒の闇から生まれし神、この吉田健太郎こそがこの世のすべて」
吉田健太郎と言う生徒は相変わらず自分の世界の中に入っている。
「でも、よっしー。お前、この前の小テスト0点じゃなかったっけ?」
「うるせー。」
相変わらず中二病を拗らせている吉田健太郎に鋭い突っ込みを入れたのは山田連。
健太郎は、どこか憎めないその可愛らしいキャラから、一部の生徒の間ではよっしーの愛称で親しまれている。
山田連は教師に茶々を入れるように、すっかり彼に茶々を入れる役目に馴染んでいる。
吉田健太郎は少し自分の世界に入りすぎていて心配な部分はあるけれど、根の部分は優しいし、山田連も茶々を入れることは日常茶飯事なものの、さほど悪質な行動はしないので心配はしていない。
問題は、植松博と相川春樹の2人である。彼らの共謀により、計画的な授業妨害が行われる。クラス全員が一斉にボールペンのノック音を鳴らす。凛が注意しても、彼らはその行為を辞めず、その日の授業は全くと言っていいほど進まなかった。この日を境に、再び地獄のような学級崩壊が始まった。授業中に生徒が机の上を走り回る、菓子を食べる、カードゲームを始めるなど、最早やりたい放題である。凛がいくら注意をしても、彼らは聞く耳を持とうとしなかった。
「せっかく対人関係ゲームで、人間知恵の輪をしたり、集団絵画をしたりして、少しずつクラスがまとまってきたと思っていたのに、どうしてこうなってしまったのかあしら。」
凛は溜息をついた。