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中学教師園崎凛  作者: finalphase
第1章 中学1年生1学期編
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第25話 盗難事件

 その日、1年3組では久々の問題が起こった。何でも、金子沙織の教科書が消えたというのだ。


1冊の教科の教科書だけが消えただけなら、どこかに置き忘れてきたなどということも考えられる。


しかし、消えたのは主要5教科の一式。普通に考えたなら、誰かしらが持っていったというのが自然であるように思える。


凛は、朝のHRで何か知っている人がいれば教えて欲しいと頼んだ。


凛の心にはモヤモヤした気持ちがあった。というのも少なからず教え子を完璧に信じられない気持ちがあったから。


自分の教え子を無条件に信じるのは教師の基本な筈である。


けれど、凛は何となく小林侑李がこの件に関与しているのではないかと勘繰ってしまったのだ。


確かに、日頃の彼女の教員に対する態度は目に余るものがある。


けれど、普段のイメージだけで生徒を決めつけるのはあまり良くないはずだ。


それに、彼女がこの件に関与しているという決定的な証拠もない。証拠がない限り、彼女を責めることはできない。


凛は、小林侑李のことを疑った自分に、教え子の1人を疑った自分に反省した。


昼の休み時間に、2人の生徒が凛のもとにやってきた。


浅野真美と小林侑李である。何でも、金子沙織の件で話したいことがあるそうだ。


凛は、ここで真美が沙織を嫌悪していたことを初めて知ることになる。あんなに良く気が利いて、誰にでも優しくできる真美にも、裏の一面があることが分かった。


どうやら真美は侑李に言われて、沙織の大切なものを奪うことを考えていたようだ。けれど、実際に行動には移していないと言う。侑李も真美にそう言った趣旨の発言はしたものの、沙織の教科書を盗んだりはしていないと言う。


「教えてくれてありがとう」、と感謝の言葉を述べつつ、「浅野さんと小林さんの友情は、とっても固いんだな」と凛は心の中で呟いた。


凛にすべてを報告し終えてその場を後にすると、「あんなこと言う必要あった?あんたの本性をバラしてまで...」と侑李が真美に尋ねた。


「分かんない。けど、言っておいても損はないと思う。」と真美。


「分かんないのかよ。」、侑李がそう言って微笑む。


美しい笑顔である。真美は、侑李の子の笑顔が好きだ。誰にも奪われたくない。可能なら、ずっと近くでこの笑顔を守りたい。


真美が敢えて担任の凛にこのことを報告したのには、侑李が疑われないようにするためという目論見もあった。


だから、自分が金子沙織に対して抱いていた感情も正直に打ち明けた。


「でもさ、私たちじゃないなら、一体誰がやったのかな?」


侑李があどけない瞳で真美を見上げた。


それは、心を許している相手にしか見せない、純粋で透き通った瞳だった。

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