第22話 盗難計画
浅野真美と小林侑李の金子沙織たちに関する嫌悪感は日に日に強くなっていった。
「侑李、私、もう我慢できない。」
「何が?ああ沙織たちのことか。」
「そうそう。あいつら、いや、あいつ。私を苛立たせてる原因のほとんどは金子沙織。もう田辺日和なんてどうでもいいや。自分もいじめの主犯格だったくせに、途中から善人ぶりやがって。いじめてた子と仲良くなるとか、ほんっと、信じらんない。」
「分かる。私もあいつには苛つかされてる。ねぇ、真美、いけないこと、しちゃおっか。」
「いけないこと?」
「そう。あいつの大切なもの、奪ってやんだよ。」
「あいつの大切なものって?」
「う~ん、例えば、一番分かりやすいのは、周りの友達とか?るなとかありさ、それに田辺日和。あいつと親しい人があいつから離れれば、あいつは孤独という生き地獄を味わうことになる。」
「そりゃいいね。でも、どうやってるなたちを彼女から引き離すの?」
「そう。そこなんだよ。難しいのは。私が思いついたのは、あいつの悪い噂を流す、とかね。ほら、クラスの中での印象は多分沙織なんかよりよっぽど真美の方が良いし。」
「まぁ私は猫被るの、得意だからねー。」
真美が得意げに微笑む。
「飲酒してるとか、煙草吸ってるとかいう噂を流しても信じてもらえないかもしれないから~、金子沙織はクラス内でいじめを行っている、とかどう?」
「良いんじゃない!実際、いじめしてたわけだし、あいつ。」
「この噂を流しつつあいつの様子を観察してあいつが大切にしてるものを見つけよう。」
「大切にしてるもの?」
「浜森は貴重品の持ち込み禁止だから、スマフォとか金目のものは狙えないね。けど、けど、あいつも大切にしてるものの1つや2つくらい学校に持ってきてるはずだよ。それをパクッてやんのさ。」
浜森とは、真美たちが通っている中学校の名前である。真美は侑李の提案は素晴らしいなと心の中で呟き、「良いねぇ。それ最高!」と悪い笑みを浮かべた後、僅かな不安を口にした。
「けど、もしそのことがバレたら?」
「万が一そうなったら、その時は私が1人で全部やったってことにするよ。」
「え?でも...」
「真美はクラスでの印象が良いからさ。そんなことでイメージを汚して欲しくない。私は元からクラスでのイメージ、悪いしね。」
「ありがと」、そう言って真美が頷く。
かくして、真美と侑李による「沙織の大切なもの盗難計画」は指導したかのように見えた。