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中学教師園崎凛  作者: finalphase
第1章 中学1年生1学期編
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第20話 合意形成

「多数決も良いけれど、少数派の意見が尊重されないので、やっぱり、みんなが納得できる形で話し合いで決めるのが良いと思います。」


教室内の一部で拍手が起こる。早乙女梨華の意見に賛成した生徒たちである。


今、1年3組ではこの前の総合の時間の話し合いの続きが行われていた。


クラスの団結力を深めるために、凛が試みた集団絵画。


だが、事の本質はそこではない。集団絵画は、いわば手段に過ぎない。


重要なのは、合意形成を図ること。


すなわち、違う意見を持つ生徒同士が話し合いを行う中で折り合いをつけ、意思決定を行うプロセスである。


その過程を営むことが最重要課題であり、極端に言えば集団絵画は最悪完成しなくても構わない。


学校教育の重要性はまさにこの点にある。教材や情報が充実している現在、勉強は学校以外の場所でもできるのだから。


「じゃあまず海の絵が良いと思った人、理由を教えてください。」


司会進行は引き続き水野が務める。


「やっぱり海は大きくて綺麗だし、見ているだけで心が癒される。大きな海を見ているとどんな悩みも、些細なことに見える。だから、私はそんな海の絵が描きたいんです。」と沙織。


「じゃあ次は、山の絵が良いと思った人、意見をお願いします。」


「海も良いけど、山も自然が一杯で心を癒してくれます。鳥や蝶とか、色んな生き物とも触れ合えるし... 山の頂に達した時の達成感は別格。」と真美。


「僕たちの学校の絵なんだから、学校を描くのはどうだろう。」、「青空だったら心がすっきりして爽快な気分になれると思うわ。」、「やっぱり川を流れる紅葉が古風な感じがして良いと思う。」、他の生徒からも様々な意見が出た。


しかし、意見がたくさん出るに連れて、話し合いの収集がつかなくなりそうになっていった。


その時、山川裕也が手を挙げた。


「これだけ色んな意見がでたんだし、絵の中に全部の要素を入れちゃえば良いんじゃね?いや、良いんじゃないですか。」


クラスメートが一斉に噴き出した。何しろ、彼が話し合いの場で敬語を使ったのは初めてのことだったから。


「な、何がおかしいんだよ。」


「ごめん。ごめん。」、水野が真っ先に謝る。


「そんなめちゃくちゃな案ありかよ。」


「まあ良いんじゃない。集団絵画自体特に決まりはないわけだし。先生も自由にやって良いって言ってたから。」


「学校と山と海と川を流れる紅葉、それに快晴。結構滅茶苦茶ね。」


徐々にクラスメートの一体感が増してきた。

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