第19話 唯一の友だち!
浅野真美は、長年孤独の日々を過ごしてきた。誰にも言えない本音、相談できる人もいない辛さ...
人間なんて所詮は自己中心的な生き物。どいつもこいつも人の苦労も知らないで、自分のことばかり考えやがって。
友だちなんて、何の役にも立たない。この世で一番大切なのは金、家庭環境に恵まれなかった彼女がこのような考えに至るのは至極当然の原理であった。
そんな彼女に、学校で始めて話しかけてくれたのが侑李だった。最初は、彼女のことを鬱陶しく思っていた。
「赤の他人の癖に、私のことなんて何も知らない癖に、馴れ馴れしくすんなよ。」と何度思ったか分からない。けれど、彼女の優しさに触れるにつれて、真美は彼女の人間性に強く惹かれるようになっていった。
「友だちなんかいらない。クラスメートなんて所詮は赤の他人」、今まではそう思っていたけれど、侑李と出会ってから考え方が変わった。一緒にいるだけで落ち着くし、悩みを話せば気が楽になる。
侑李は、真美と似たような境遇だった。
というのも彼女は、日常的に母親から暴行を加えられていたからだ。
前の父親は、ギャンブル中毒に陥り、借金をたくさん作って、自らこの世を去った。今の父親は、定期的に母親に暴行を加えている。
母親は自分が暴行を加えられた腹いせに、侑李に八つ当たりするのだった。
このような背景があり、2人の仲は急速に深まったというわけだ。
真美と侑李は、休み時間、学校のトイレでるなと待ち合わせて作戦会議を開始した。
「るな、この前の話、どう?私たちの仲間にならない?」と真美。
「誘ってくれたのはありがたいけど、やっぱ遠慮しとくわ。」
「どうして?やっぱり、私たちのことが嫌いだから?」
少し沈黙したあと、るなははっきりと言った。
「それもある。」
「それもあるのかよ」、真美は心の中で突っ込みを入れる。
「けど、」
「けど?」
「一番は沙織の悲しむ顔を見たくないから。確かに私は小山ありさと田辺日和が嫌い。ありさは私にくっついてなきゃ何もできない寄生虫だし、日和も暗くてうじうじしてるところが嫌い。でも、彼女たちを傷つけたら、沙織が悲しむでしょ。」
侑李が、真美に対して最高の友だちであるように、沙織はるなにとっての最高の友だちだった。
「あっそ。沙織沙織五月蠅いわね。あんたのことも沙織と一緒に潰してやるから覚悟してな。」
真美がるなの耳元で囁く。
「ふぅん。やれるもんならやってみなさいよ。」
るなは真美に対して強気な言葉を返すと、堂々とその場をあとにした。