第127話 相合傘!
その日、るなは映画館から帰る所だった。表面上仲が良い小山ありさと遊びに来ていたのだ。
ありさはるなに好意を寄せているけれど、るなは彼女のことを嫌っている。この関係は以前から変わっていない。るなとしては、ありさと過ごす時間は物凄く虚無に思えた。
映画の内容は、全く覚えていない。一刻も早く帰りたいと思っていたから。
家路に向かっていると、雨が降ってきた。その日、傘を所持していなかった彼女は半ば焦った。服が濡れてしまうかもしれないから。
そんな彼女に、優しく傘をさす者があった。
「秋田県!?」
彼女は彼を見つめて声を挙げた。
「あんた、何でこんなとこにいるのよ?」
「その呼び名はやめろって言ってんだろ。いつも通り、友達とくだらない遊びをしてただけさ。もし良ければ家まで送るよ。」
「家までは良いよ。ほんのそこまでで大丈夫。その、ありがと。」
結局、健はるなを家の近くの公園まで送った。
健と歩いている時間は、るなにとっては永遠のように感じられた。彼女は1つの傘に2人入ってもあまり濡れないことに、驚きを感じていた。健の方を見ると、ずぶ濡れの彼の姿が目に映った。
「健、私を濡らさないために、気を遣ってくれてるんだ...てか、これ相合傘だよね!?」
そう思うと変にドキドキした。
健が行ってしまうと、妙に寂しさを感じた。
「Bakit pakiramdam ko nag-iisa ako? Hindi ko talaga type si Ken. And besides, umamin siya sa akin as a punishment game, you know? Nainlove sa isang ganyan... Pero siguro hindi mo siya average na lalaki. Hindi ako makapaniwala na sobrang bilis ng tibok ng puso ko... (私、何で寂しいと思ってるんだろ。健はそんなに好きなタイプじゃない筈なのに。そもそも、あいつは罰ゲームで私に告白してきたのよ? そんな人間を好きになるって... けど、あいつは巷に溢れてるありきたりな男じゃないのかも。この私が、こんなにドキドキするなんて...)」
彼女の心の中は様々な思いで溢れかえっていた。
一方、ありさは家路に向かいながら、最高潮の幸福を感じていた。何しろ、映画館で大好きな人と一緒の時間を過ごせたのだから。
「るなとの距離が少し近づいたかな」、そう思って微笑んだ。
るなが、自分に対して良い印象を抱いていないとも知らずに...