第126話 歪んだ愛!
私、浅野真美。学校では小林侑李と仲良くしている。
侑李は可愛くて、ちょっと性格がきつめで、でも根は優しい魅力的な美少女。
人を惹きつける不思議な魅力を持ち合わせている。男女問わず、彼女の魅力の沼に嵌る者は多いのだ。
可愛い彼女を、自分だけのものにしたい、そう思っていた。
なのに、最近の彼女ときたら、山川裕也と付き合いだして、充実している。性格も丸くなり、明るい笑顔が増えた。
山川裕也は悪い人ではないと思う。けど、彼が私の侑李を盗んだと思うと強烈な嫉妬心が燃え滾る。
家に帰っても父親からの虐待が待っている。学校でも心を開ける人がいない。
そんな私にとって、侑李だけが心の支えだった。その大切なものを奪われた悲しみを、私は休み中にも引きずっていた。
最近は、彼女と話していない。まあ、私の方が侑李を避けているだけなんだけど...
侑李は、もう私のことなんてどうでも良いのかな? 彼氏の方が大事なのかな? そう思うと胸が締め付けられた。
一方、小林侑李は今までにない充実した日々を送っていた。前までは毎日が辛かったけれど、学校に行って山川裕也と会うという楽しみができた。
家で虐待を受けていても、親から十分な愛が無くても構わない。なぜなら、彼氏という存在が、彼女の心を満たしてくれるから。
侑李の彼氏である山川裕也は、今日も九条慶翔と共にサッカー部の練習に励んでいた。彼女がいないと少し寂しくはあるが、パフォーマンスの質は変わらない。
裕也は侑李と付き合い始めてから1つのことを学んだ。
それは、「愛される条件は孤独に耐えられる」ということだ。
人を愛することは、素晴らしいことだと思う。恋愛至上主義と言う言葉もあるくらいだから。けれど、孤独に耐えられない人間は、自分が好きになった対象に依存し、歪んだ関係性が形成される。そして、行きつく先は決して幸福をもたらさないだろう。それを回避するためには、お互いが自立している必要があるのだ。故に、孤独に耐えられることが2人が愛し合うための条件になり得る。
そして、長い関係を維持するには互いの価値観を尊重し、ある程度妥協することが必要になるだろう。
最も、侑李は彼の価値観を尊重してくれるし、思っていた以上に優しい性格で、ストレスを感じたことが無いのだが。むしろ、彼女の可愛さは自分とは釣り合わないと感じるくらいだ。
「万が一彼女に何かあっても、守ってあげられるような強い人間になろう。現状は俺の方が助けられてる気がするけどな。」
裕也は心の中で苦笑いした。