第124話 親孝行な娘!
私、田辺日和。根暗で人見知りの中学1年生。
勉強も運動も駄目駄目だし、コミュニケーションも上手くいかない。
それに、私は生まれながらにして吃音を持っている。
吃音とは、いわゆるどもりのことだ。言葉をなめらかに言うことができず、つかえて同じ音を何度も繰り返したりする
この症状のせいで、何度も悲しい目に遭ってきた。中学入学当初も、正しい行動をしたはずなのにいじめられた。
その時にも、いつものように思ったんだ。
「私に吃音が無くて、明るい性格だったらこんな目に遭わずにすんだのかな。」って。でも、私は今までの辛い経験から学んだ。どんな災難も、耐えれば必ず光が訪れるって。
今は、私をいじめたグループの主犯者である金子沙織と親しくさせて貰っている。彼女は本当に良い人だ。いつも私に気を遣ってくれるし、いつも明るく振舞っている。運動神経も良いし、見た目も可愛い。
そんな彼女が、なぜ私をいじめたのかと不思議に思うことがある。普段の彼女は、とてもそんなことをするような人ではないのに。
いじめをする側にも、それなりの理由があるのかもしれない。私は休み中に彼女にそのことを聞いてみようかと思っている。もちろんそれがきっかけで人間関係が壊れるリスクもあるけれど、せっかくここまで仲良くなれたのだから、深い話がしたい。
私は何の取り柄もない役に立たない人間だけど、両親にはとても感謝している。私をこの世に生んで、大切に育ててくれた両親に少しでも恩返しをしたい。迷惑をできるだけかけたくない。
だから、私はいじめられていることを、両親には言わず、笑顔で振る舞っていた。また、家事も積極的に手伝うようにしていた。将来はとても不安だけど、今は目の前にあるできることをやるしかない。
宿題もしつつ、家事をやり、数少ない友達とも遊ぶ。そんな充実した冬休みを過ごしたい。
そんな願いを抱きつつ、布団の中に入った。
日和が眠りにつくと、彼女の両親はこんな会話を行っていた。
「ねぇ、正嗣。日和は本当に良い子に育ったわね。吃音を持って生きることになったのも、私があの子を産んでしまったせいなのに...」
「明美、それは明美のせいじゃないよ。自分の子どもが障害を持って生まれてくるなんて、誰にも予測できないだろ。でも、確かに親として申し訳ないとは思っているよ。彼女にはやりたいことをやらせてやろう。日和は本当に良い子だからな。俺の、いや、俺たちの自慢の息子だよ。」